最新記事

中東和平

報復合戦でガザ緊迫、次の戦争に突入か

直接対話を求める国際社会の圧力をあざ笑うかのように、イスラエルとハマスの攻撃は激しさを増す一方

2010年8月3日(火)18時37分
セオドア・メイ

暴力の連鎖 8月2日、ガザ地区にロケット弾が撃ち込まれ、ハマスの指揮官が死亡したが、イスラエルは関与を否定している Ibraheem Abu Mustafa-Reuters

 8月2日朝、紅海に面するイスラエル南部の町エイラートに、エジプトからとみられる複数のロケット弾が着弾した。先週末以降、パレスチナ自治区ガザを支配するイスラム過激派組織ハマスと激しい攻防を繰り広げているイスラエルに、新たな火種が舞い込んだことになる。

 イスラエルとハマスの対立は、この1年以上で最も緊迫している。7月30日、ハマスがイスラエルに迫撃砲やロケット弾を打ち込むと、その日の夜11時30分、イスラエル空軍は報復措置としてガザ地区を含む3カ所の標的に同時攻撃を仕掛けた。

 2009年1月のイスラエルのガザ侵攻以降、イスラエルとハマスの報復合戦が続いているとはいえ、ガザの中心街はこれまで攻撃を免れてきた。だが今回はハマスの訓練施設に集中的な攻撃が加えられた。爆撃音が響き渡り、周辺のビルの窓ガラスは震動で震えていた。

 イスラエルの戦闘機が続々とガザに向かっているという噂が広まり、ガザ住民がパニックに陥るなか、ハマスの兵士らは群集の波を必死で食い止めようとしていた。空に向かって威嚇射撃をした兵士もいる。

 ガザのシファ病院も混乱を極めていた。マシンガンを持った警官や負傷者の家族、血気盛んな地元メディアでごった返す病院の玄関を、ストレッチャーを押した救急隊員が分け入っていった。

ガザ中心部への攻撃は控えてきたのに

 イスラエル軍は、ガザ中心部でハマスの指揮官一人を殺害し、さらにエジプト国境沿いの町ラファの密輸トンネル地帯も攻撃した。一方、ハマスもこの日の朝、イスラエル南部の町アシュケロンの住宅街にロケット弾を撃ち込んだが、負傷者は出なかった。

 昨年のガザ侵攻以降、こうした光景は決してめずらしくはない。それでもハマスはこれまで、イスラエルの大都市に高性能のロケット弾を撃ち込むことはなかった。イスラエル側も民間人の被害を減らすために、ガザ中心部への空爆を控えていた。

 先週末の戦闘は、マフムード・アッバス議長率いるパレスチナ自治政府とイスラエルに対し、国際社会が直接の和平交渉の再開を強く求めた矢先に勃発した。イスラエル政府は、今回の攻撃は和平交渉を頓挫させるパレスチナ側の試みの一部だろうと主張している。
 
 攻撃は週末を通して続いた。8月1日夜、ガザのデルバラハ難民キャンプの個人宅で大規模な爆発が勃発し、58人が負傷したという。ハマスはイスラエルの仕業だと非難したが、イスラエルは関与を否定している。

 翌2日の朝、エジプトのシナイ半島からイスラエルとヨルダンに向けてロケット弾が発射され、1人が死亡。イスラエルのメディアは、週末のイスラエルのガザ襲撃への報復だと伝えている。

 ハマス幹部でパレスチナ自治政府議会議長のアフメド・バハーは、7月30日の空爆で死亡したハマスの幹部イーサ・バトランの葬儀に参列し、弔辞の言葉として極めて辛辣な発言をした。

 バトランは「伝説的な男だった。彼は背信と裏切りに満ちたロケット弾に殺された」。「私たちのエルサレムを守る権利を捨てるはずがない。勝利はわれわれの側にある」

 一方、イスラエルの担当者は、ガザとエジプトからの攻撃を非難し、暴力に打ち勝つと宣言した。

 イスラエルのメディアによれば、ベンジャミン・ネタニエフ首相は一連の戦闘を「和平プロセスを妨害したいテロ集団が、イスラエルとヨルダンの無実の民間人を標的にした犯罪的な攻撃」と語ったという。

本当に気がかりなのはイランの核疑惑

 ハマスは7月30日のイスラエルへの攻撃に関与していないと主張しているが、イスラエルは以前から、ガザ地区からの攻撃はすべてガザを実効支配しているハマスの責任だと発言してきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NEC委員長、NY連銀報告書を批判 「国民が関税負

ビジネス

米政権、自動車燃費規制巡りEV優遇規則を廃止へ

ワールド

NEC委員長、NY連銀報告書を批判 「国民が関税負

ワールド

トランプ氏、ディエゴガルシア島巡る英の対応を非難「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポーランドが「核武装」に意欲、NATO諸国も米国の核の傘を信用できず
  • 2
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 3
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方...勝利のカギは「精密大量攻撃」に
  • 4
    生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 9
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 10
    アフガニスタンで「対中テロ」拡大...一帯一路が直面…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中