最新記事

食の安全

中国毒食品の深すぎる闇

毒入りギョーザ事件の容疑者が拘束されても解決しないメード・イン・チャイナの構造的有毒度

2010年3月31日(水)16時10分
横田 孝、山田敏弘、佐野尚史、知久敏之(東京)
長岡義博、田中奈美(北京)
ジェイミー・カニングハム(ニューヨーク)

ギョーザは氷山の一角 2年前、日本で10人が中毒を起こした冷凍ギョーザを製造した天洋食品の工場で安全性を説明する社員(08年2月) Claro Cortes IV-Reuters

北京から車で東へ約1時間半、天津市の開発区を抜けたところにその村はある。

 天津市北辰区青光鎮青光村。人口約1万人のこの村では、今年5月に天津市当局の摘発を受けるまで多くの家の軒先にニセ酒用の空き瓶が堂々と並べられていた。

 先週、本誌記者が訪れたときは目立ったところに空き瓶はなく、一見ニセ酒の密造をやめたようにみえた。

 だが青光村で出会った郭(クオ)という名の中年男によれば、村の家々の奥で、酒瓶に粗悪酒を注ぐ作業が相変わらず続いている。

 傑克丹尼(ジャックダニエル)、芝華士(シーバス・リーガル)、百威(バドワイザー)......。「洋酒の空き瓶ならなんでも買う」と、郭は言う。天津など都市部のバーから空き瓶を回してもらい、それに粗悪酒を注いでバーに約30元(500円)で売り、バーが再び正規の洋酒の値段(約6000円)で売るのが彼らの手口だ。

 青光村のニセ酒を飲んだ人はまだ運がいいほうだろう。山西省朔州市では、98年にメチルアルコール入りのニセ酒を飲んだ27人が死亡。広州市でも04年に11人が死亡する事件があった。

 中国国外なら安心ともかぎらない。「売っているのはすべてニセ酒」といわれる北京市豊台区の安売り市場で、東北地方出身の店主は「日本の業者が買いつけに来たこともある」と、横浜の中華街の業者が残していった名刺を机の引き出しから取り出した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

エルニーニョ、年内にラニーニャに移行へ 世界気象機

ワールド

ジョージア「スパイ法」成立、議長が署名 NGOが提

ビジネス

アングル:認証不正が自動車株直撃、押し目買い機運削

ワールド

中国、ペルシャ湾3島巡る姿勢に変更なしと強調 イラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「肖像画ドレス」で歴史に名を刻んだ、プリンセス御用達

  • 3

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...すごすぎる日焼けあとが「痛そう」「ひどい」と話題に

  • 4

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 5

    1日のうち「立つ」と「座る」どっちが多いと健康的?…

  • 6

    ウクライナ「水上ドローン」が、ロシア黒海艦隊の「…

  • 7

    ヘンリー王子とメーガン妃の「ナイジェリア旅行」...…

  • 8

    「娘を見て!」「ひどい母親」 ケリー・ピケ、自分の…

  • 9

    中国海外留学生「借金踏み倒し=愛国活動」のありえ…

  • 10

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「肖像画ドレス」で歴史に名を刻んだ、プリンセス御用達

  • 3

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 4

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 5

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 6

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中