最新記事

外交

スパイはドバイから出て行け!

ハマス幹部暗殺事件を捜査中のドバイ警察が外国人スパイに国外退去を通告。身分を隠して活動する情報工作員には大きな痛手だが

2010年3月12日(金)15時53分
マーク・ホーゼンボール(ワシントン支局)

捜査中 暗殺事件の捜査の進捗状況について説明するドバイ警察のタミム長官 Jumana ElHeloueh-Reuters

 すべての外国人スパイは、1週間以内にドバイをはじめとする湾岸地域から退去せよ----アラブ首長国連邦(UAE)ドバイの警察は10日、そう通告した。世界中のスパイの間ではこの退去通告は広く知れ渡っているが、アラブ世界のメディア以外ではあまり報道されていない。

 ドバイに拠点を置く新聞「ガルフ・ニュース」は、ドバイ警察のダーヒ・カリファン・タミム長官がこの退去通告を認めたと報じている。タミムは、今年1月にドバイのホテルでパレスチナ過激派ハマスの幹部マフムード・マブフーフが暗殺された事件の捜査を指揮している。

「現時点で湾岸地域にいるスパイは1週間以内に退去しなければならない。さもなくば必要な措置を講じる」と、タミムは発言したと報道されている。対象となるスパイはヨーロッパ諸国のパスポートを所持するスパイのことかと尋ねられると、タミムは「ヨーロッパであろうと他の何であろうとだ」と答えたが、詳細には言及しなかった。

 アルアラビアのウェブサイトによると、湾岸地域の新聞「アル・カレエジ」は、退去しないスパイには「究極の対策をとる」とタミムが発言した、と報じているという。しかしそれが具体的にどのような対策なのかは報じられていない。

暗殺「成功」をほのめかすモサド

 ドバイ当局が本気なら、今回の退去通告で最も影響を受けるのは誰か。外交官としての認可を受け、UAEに公式に身分を申告して活動するスパイではなく、身元を隠して活動している情報工作員や情報提供者だろうと、外国の情報関係者は見ている。CIA(米中央情報局)はコメントを拒否している。

 タミムが指揮するドバイの捜査当局が、暗殺事件の実行犯と見られる26人が所持していたパスポートや監視カメラの映像を公開すると、事件は国際的な大騒動へと発展した。暗殺はイスラエルの工作機関モサドによる犯行というのが大方の見方だ。

 イスラエル政府はこの件に関するコメントを断固として拒絶している。しかし西側の情報関係者によると、モサドは暗殺作戦に「成功した」とのメッセージを在外の関係者の間に広めているという。駐米イスラエル大使館のジョナサン・ペレド広報官は、この事件に関してイスラエル政府がコメントすることはない、と語った。

 ドバイの捜査当局が既に発表した情報によると、犯行グループは偽造したり不正に入手したりしたヨーロッパとオーストラリアのパスポートを所持し、自然死に見せかけてマブフーフ暗殺を実行したとされる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中