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ベルリンの壁崩壊20年、中欧の失望

2009年11月9日(月)15時28分
ポール・ホッケノス(インテルナツィオナール・ポリティーク誌編集者)

欧州議会にも悪影響が

 こうした感情が爆発すれば、実際の暴力につながることもある。今年6月の欧州議会選挙で超民族主義的な過激政党が躍進したハンガリーでは、ロマ人を狙った殺人や放火事件が起きている。

 こうした勢力の影響は、EUにも及ぶ。欧州議会では、中欧諸国から選出された右派議員の会派が台頭している。ブルガリアのアタカ国民連合やルーマニアの大ルーマニア党など、外国人排斥を公然と訴える政党も、欧州議会で議席を獲得した。新たに結成された議会内会派「欧州保守改革グループ」のメンバーの半数は、ポーランドやチェコ、リトアニア、ハンガリーの議員が占めている。

 もちろん、中欧諸国の政治がすべて右翼の保守派に牛耳られているというわけではない。しかし89年の変革をもたらした街頭デモで示されたような市民精神が、もっと発揮されることを願わずにはいられない。

 中欧諸国で民主主義を掲げる人たちには、不屈の精神と勇気がある。だが、乗り越えるべき課題も多い。20年前に思っていたよりも、ずっと多いかもしれない。

[2009年10月14日号掲載]

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