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メドベージェフの大言壮語

国内はリベラル、外交は超タカ派──大統領の「新ドクトリン」は限りなく空疎だ

2009年4月7日(火)16時11分
オーエン・マシューズ(モスクワ支局長)、アンナ・ネムツォーワ(モスクワ支局)

 ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領のねらいは何か。就任から6カ月、欧米の政府関係者や外交官はその真意を測りかねている。

 メドベージェフはロシアの腐敗に終止符を打ち、経済を多様化させ、世界経済の仲間入りをし、法の支配を確立し、言論の自由を保障すると力説してきた。ロシアを、もっと一般市民が「国政に積極的な役割」を果たせる国にしようとも訴えてきた。

 その半面、世界的な金融不安や8月のグルジア紛争をアメリカのせいにしている。近隣諸国に対するロシアの「特別な利害」を振りかざし、ロシアの発言権を強める方向に世界の「構造」を大きくシフトさせようともしている。

  11月5日に行った初の年次教書演説は、ウラジーミル・プーチン首相の側近セルゲイ・カラガノフに言わせると「ロシア史上最もリベラル」な大統領演説だった。しかし欧州に向けたミサイルの配備をちらつかせたあたりは超タカ派だ。どうやら、内向きにはソフトで、外向きにはハードなレトリックを使い分けるのがメドベージェフ流らしい。

「メドベージェフ・ドクトリン」の最終目標は、ロシアの破綻した社会を修復し、国際的な地位を回復すること。要するに世界の軍事バランスと金融インフラをロシアに都合よく再構築することだ。そのためには軍事力と豊富なエネルギー資源にものを言わせ、ヨーロッパでの存在感を高める必要があるという理屈だ。

「古い一極支配は滅びつつある」と、ロシア上院国際問題委員会のミハイル・マリゲーロフ議長は言う。「新たな勢力が台頭している。アメリカに加え、ブラジルや中国、インド、EU(欧州連合)、ロシアが影響力を増している」

 メドベージェフの壮大な目標が、大国ロシアの復活というプーチンの基本路線を踏襲しているのは確かだ。無理もない。今も実権は首相のプーチンが握っているし、大統領に返り咲くのも時間の問題とみられている。

 とはいえ、2人の個性には明らかな違いがある。プーチンが民主主義を口にするのは都合のいいときだけ。コソボ紛争やイラク戦争を引き合いに出して、グルジア侵攻を正当化したのがいい例だ。

食堂で市民の不満を聞く

 一方、弁護士でソ連末期に進歩派の拠点サンクトペテルブルクで育ったメドベージェフは、よりオープンなスタイルを身につけている。自分でインターネットを使いこなし、国内最大のソーシャル・ネットワーキング・サービスの書き込みをチェックする。野党のウェブサイトにも目を通すらしい。抜き打ちで喫茶店や食堂に立ち寄り、物価高や腐敗について客の不満を聞くこともあるという。

 それだけではない。経済活動や地方自治、言論の自由に寛容な姿勢も見せている。単なる人気取りではない。トップの指導部が政治をしっかり支配する一方、現場レベルでは今以上に開かれた社会を実現することこそ、ロシアの繁栄を維持する道だと、メドベージェフは確信している。

 11月21日、メドベージェフは大統領の任期を6年に延長する憲法改正を提起し、下院で可決させた(これでプーチンが復帰すれば2期12年の長期政権を築ける)。その一方、政党に対しては党首の定期的な改選を義務づけ、議会制民主主義を活性化させたいと言う。また経済面ではリベラルな閣僚を登用し、擁護している。

 何より重要なのは、メドベージェフがロシアのかかえる問題を理解しており、それを隠そうとしないことだ。原油価格高騰のおかげで、プーチン時代のロシア経済は年間7%の伸びを謳歌した。だがプーチン自身は、経済の多様化にも腐敗の取り締まりにも興味がなさそうにみえた。

 一方、メドベージェフは司法と行政の両面における腐敗を激しく批判し、官僚たちは「相変わらず自由な企業活動を嫌い」、メディアの統制や選挙介入に奔走していると糾弾してきた。先ごろは閣僚たちに対し、革新を促して中小企業の起業・発展の障害を減らすことが「国家的な優先課題」だと訓示している。

 しかし外交面では、プーチンより弱腰とみられないように虚勢を張っている。プーチンも「世界の多極化」を口にしたが、それをグルジア侵攻という形で行動に移したのはメドベージェフだ。南オセチア自治州やアブハジア自治共和国の分離独立も一方的に「承認」し、ロシアが周辺国を思いのままにできることを見せつけた。

 メドベージェフはさらに、国際社会のルールを書き直し、西側への接近がロシアの利害に反するような国々に対するロシアの「特権」を認めさせようともくろんでいる。ロシアと周辺各国の「歴史的、文化的つながり」を認めろ、ということらしい。

「ソ連を再建するつもりはないが」と、与党系議員のセルゲイ・マルコフは言う。「偉大なるロシアには、周囲を友好国で固める権利があっていい」

 しかし、威勢がいいのは口先だけ。メドベージェフの壮大な政策目標が達成される保証はどこにもない。西側に怒りと不信感をいだくメドベージェフには、経済の目標を達成するうえで見習うべき手本がほとんどない。

 こうなると、ソ連時代の焼き直しだ。指導者は改革の号令を発するのみで、後は現場の官僚任せ。これでは何も変わらない。メドベージェフの目標は立派だが、実現のための手だてはないに等しい。

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