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回顧録

人気コメディー番組のコメディエンヌが書いた「コロナ泣き笑い記」

Crying and Laughing

2021年09月03日(金)11時46分
H・アラン・スコット(ライター、コメディアン)
セシリー・ストロング

コメディーと緊張感は表裏一体だと言うストロング GARY GERSHOFF/GETTY IMAGES

<米人気コメディー番組『サタデー・ナイト・ライブ』の人気者セシリー・ストロングが自著で語った別れと愛>

笑いと悲しみの間には、それほど大きな違いはない。「コメディーには、緊張感が付き物。その2つは表裏一体なの」と、人気コメディー番組『サタデー・ナイト・ライブ(SNL)』に出演するコメディエンヌのセシリー・ストロングは言う。

2020年のストロング自身がそうだった。まず、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)の最中にSNLの撮影があった。次にアップルの動画配信サービス、アップルTV+の新しいミュージカル・コメディー『シュミガドーン!』をどうやって安全に撮影するかという問題に直面した。

ストロングは繰り返し不安と憂鬱に襲われるなかで、新型コロナのために新しい恋を「保留」せざるを得なかった。30歳のいとこオーウェン・ストロングが脳腫瘍で亡くなる悲劇も経験した。

「いとこが亡くなって、付き合い始めた相手が新型コロナに感染して、しかも私の体温計は壊れていた。『私は死ぬの? 彼も?』と思った」

ストロングは8月10日にサイモン&シュスター社から刊行された回顧録『もうすぐみんな終わる』に、赤裸々に全てを書いている。「この本を書くのはすごく個人的な作業で、どうなるか分からなかった。オーウェンのことを書きたいかも分からなかった」

いとことは子供の頃は親しかったが、ずっと連絡を取っていなかったという。「私がSNLのオーディションでニューヨークに来たとき、オーウェンが会ってくれた。『あなた誰? 大人のあなたは知らないよ』って思った」

「突然彼が現れて、ずっとそばにいてくれた。家族に愛されるのがどういうことなのか、彼は教えてくれた。その愛を受け入れてもいいし、甘えていいんだと。彼が病気と診断されたとき、『心から愛してる』というメールをたくさん送り合った。私にとって、言葉にできないくらい大切な贈り物だった」

もうひとつのつらい喪失

ストロングはオーウェンの死という悲しい経験から、それまで向き合うのを避けていた別のつらい喪失にも目を向けた。「友人のリズのこと。13歳から16歳までずっと一緒だった親友が、5年前にヘロインの過剰摂取で死んでしまった。そのことをどう話したらいいのか分からなかった」

「私はとても混乱していた。どうして私がこうなって、彼女がああなったのか。私はいつでも友達に戻れると信じていたのに......。だから喪失について書くときは、リズや心の中に残っている人たちのことを振り返って、よく考えないといけないと思う」

ストロングは、その過程で人生に対する理解が深まったという。「オーウェンを理解しようとしたときもそう。彼の思考プロセスはどうだったのか。あんなに勇気があって、楽しくて、明るいのはなぜ?それを考えることで、新型コロナや悲しみにもっと上手に対処できる気がしてきた」

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