最新記事

感染症

モラル・バイタリズムの賜物? 魔女信仰と感染症防止の関係に新説

Witchcraft and Disease

2019年11月29日(金)16時05分
ロージー・マッコール

魔女信仰には感染症の広がりを防ぐという意外な効果があった(写真はイメージ)MmeEmil-iStock

<「超自然的な悪」の存在を信じる気持ちが病気を地域から遠ざける役割を果たした可能性>

魔女や悪魔の存在は、感染症が流行した原因として解釈され、感染症の蔓延を防いでいた可能性がある──多国籍の研究チームが先頃、学術誌「英国王立協会紀要」にこんな論文を発表した。

それによれば、悪魔のように邪悪で超自然的な力を信じていると、脅威を察知する感覚が高まる。すると人は、感染症などにかからないよう行動パターンを変える。例えば悪魔の存在を強く信じている人は「悪魔に取りつかれている人」(現代語で言えば「病気にかかっている人」)を避ける傾向が強いかもしれない。

論文を発表した研究チームが過去のいくつかのデータを検証したところ、病原体の発生率が高かった時期や地域では、モラル・バイタリズム(この世には善と悪の勢力があり、善い出来事や悪い出来事を引き起こしていると信じる傾向)が高くなっていた。「高いモラル・バイタリズムはプラスにも働く。感染への懸念が高まったことで、人々が対策を取り、感染率が下がったという説明は成り立つ」と、研究チームは書いている。

主な例として彼らが挙げるのは、14世紀に起きた黒死病(ぺスト)の世界的な流行だ。多くの死者を出した得体の知れないが魔女と結び付けられ、魔女狩りが増加した。

【参考記事】極上ホラー『ウィッチ』は「アメリカの原罪」を問う

もちろん、黒死病の流行は魔女の仕業ではない。だが魔女狩りなどの行動は人々に安心感を与え、これで病の蔓延を抑えられると信じさせたのではないかと論文は主張する。

保守主義の高まりも助長

その裏付けに、研究チームは過去の2つの研究を引用する。1つは途上国から先進国まで186のさまざまな文化を比較したもの(悪の勢力や魔女信仰に関するデータも含む)。もう1つは、悪魔信仰について50カ国で行った調査だ。いずれの研究でも、邪悪な超自然的存在を信じる率の高さと、病気の発生率の高さには強い相関関係が見られた。

ニュース速報

ビジネス

中国、11月輸出は予想外の減少 輸入は4月以来の増

ワールド

北朝鮮国連大使が米国を批判、非核化は「交渉から外れ

ワールド

北朝鮮、東倉里で「非常に重要な」実験成功 エンジン

ワールド

「指導者の裏切り許さない」、環境活動家グレタさんが

RANKING

  • 1

    食肉市場に出回るペット 出荷前には無理やり泥水を…

  • 2

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 3

    現代だからこそ! 5歳で迷子になった女性が13年経て…

  • 4

    ペットに共食いさせても懲りない飼い主──凄惨な退去…

  • 5

    世界最大級のネコ、体重320キロのアポロを見て単純に…

  • 1

    食肉市場に出回るペット 出荷前には無理やり泥水を…

  • 2

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 3

    ナイキ運営チームが潰した「アメリカで一番足が速い…

  • 4

    被害者であることを武器にする「#MeTоо」は不快 「…

  • 5

    現代だからこそ! 5歳で迷子になった女性が13年経て…

  • 1

    食肉市場に出回るペット 出荷前には無理やり泥水を…

  • 2

    ペットに共食いさせても懲りない飼い主──凄惨な退去…

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    現代だからこそ! 5歳で迷子になった女性が13年経て…

  • 5

    ナイキ運営チームが潰した「アメリカで一番足が速い…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:仮想通貨ウォーズ

2019-12・10号(12/ 3発売)

ビットコインに続く新たな仮想通貨が続々と誕生── 「ドル一辺倒」に代わる次の金融システムの姿とは

MOOK

ニューズウィーク日本版

絶賛発売中!