最新記事

食品衛生

「鶏肉を洗わないで」米農務省が警告 その理由は?

2019年08月28日(水)17時30分
秋山文野

鶏肉を洗わないで、と欧米では啓発に熱心 Evgen_Prozhyrko-iStock

<米食品安全検査局によって、調理前の鶏肉を洗う習慣に関する調査が行われた。家庭では珍しくない行動だが、米政府はなぜこの習慣を問題にしているのだろうか?>

「生の鶏肉を洗うな」という警告は米欧では一般的だが、わかりにくいし意味が伝わりにくい。2019年8月、米農務省(USDA)は「事前に鶏肉の調理と食品衛生に関する情報を受け取ったことがない場合、61パーセントの人は鶏肉を洗ってから調理する」という調査報告を発表した。

多くの人が「家族がいつもそうしていたから」「ヌルヌルや血合いが取れる」といった理由で鶏肉を洗っている。家庭では珍しくない行動だが、米政府はなぜこの習慣を問題にしているのだろうか?

調理前の鶏肉を洗う習慣に関する調査が行われた

調理前の鶏肉を洗う習慣に関する調査は、USDA内の米食品安全検査局(FSIS)による食品衛生と消費者行動に関する2019年版報告書で明らかになったものだ。

ノースカロライナ州に住む300名の住民を対象とし、うち148名には事前に食品と「洗う」行動に関する啓発情報のメールが送られていた。情報には、手や調理器具の洗い方、鶏肉をはじめとする生の食品の取り扱いなどに関する情報が含まれている。残りの158名は情報を受け取らない状態で、全員に調査用のキッチンで調理をしてもらった。メニューは鶏もも肉料理とグリーンサラダ。鶏肉には、病原性を持たない調査用の大腸菌の一種が付着させてあった。

調査前に参加者に送られた啓発動画

Why You Should Not Wash Meat or Poultry-USDAFoodSafety


すると、事前に情報を受け取っていたグループで鶏肉を洗ってから調理したのは7パーセントだったのに対し、情報なしのグループは61パーセントが「流水をかける」「容器の水に浸す」といった方法で調理前に鶏肉を洗った。

洗う理由は「習慣で」が28パーセント、「家族がいつもそうしていたから」が19パーセントを占め、半数近くが習慣化しているようだ。他の回答(アンケートは複数回答あり)では「ヌルヌルや皮、脂、血合いを取るため」が30パーセント「微生物や菌を取るため」が19パーセント、「化学物質や不純物を取るため」が11パーセントと、積極的に洗う派も少なくない。家族から「鶏肉は洗ってきれいにしてから調理するもの」と教えられ、実行してきたようだ。

鶏肉を洗わないほうが、菌の付着を防げる

では、鶏肉は実際に洗うことで衛生的になっているのだろうか? 鶏肉を洗った場合と洗わなかった場合、調査用に付着させた大腸菌が調理後に周囲の環境にどの程度残っているか調べられた。調理後に流しの清掃をした人もいるが、それでも鶏肉を洗うと約60パーセントのケースでさまざまな場所に大腸菌が残っていた。調理台に置かれていたスパイス容器に付着していたケースが約6パーセント、グリーンサラダのレタスに付着していたケースが約26パーセントあった。

一方で、鶏肉を洗わなかった場合、流しを清掃した後の大腸菌の付着は約5パーセント、スパイス容器への付着は約5パーセント、レタスへの付着は約20パーセントとなった。鶏肉を洗わない場合、調理台の周囲や、キッチンカウンターに置いてあった他の食品に菌が付着する可能性をかなり減らせることがうかがえる。ただし、調理中の手の洗い方が不十分な人もおり、手から菌を移してしまうケースもあるようだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ベイン、富士ソフトに法的拘束力ある提案 1株94

ワールド

中国、政府債務「大幅増加」へ 経済回復を後押し

ワールド

アングル:南アジアで国境またぐ水害増加、求められる

ワールド

米、イランに追加制裁 イスラエル攻撃受け 「幽霊船
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギ…

  • 2

    メーガン妃は「ヒールを履いた独裁者」...再び非難を…

  • 3

    突風でキャサリン妃のスカートが...あわや大惨事を防…

  • 4

    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…

  • 5

    メーガン妃とヘンリー王子は「別々に活動」?...久し…

  • 1

    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…

  • 2

    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギ…

  • 3

    キャサリン妃も着用したティアラをソフィー妃も...「…

  • 4

    メーガン妃は「ヒールを履いた独裁者」...再び非難を…

  • 5

    キャサリン妃とダイアナ妃を結ぶ、頭痛を引き起こす…

  • 1

    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…

  • 2

    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…

  • 3

    「制服」少女たちが受ける不快すぎる性的嫌がらせ

  • 4

    キャサリン妃の「外交ファッション」は圧倒的存在感.…

  • 5

    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:米経済のリアル

特集:米経済のリアル

2024年10月15日号(10/ 8発売)

経済指標は良好だが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くのアメリカ国民にその実感はない