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真っ赤な嘘だった名キャスターの戦場武勇伝

大統領選でヒラリーを徹底追及したNBCの看板キャスター、自分も大ボラを吹いていた

2015年2月20日(金)12時01分
アレック・マギリス

功名心? イラク取材中の体験談が偽りだったことを認めたウィリアムズ Jeff Riggins-NBC NewsWire/Getty Images

 米NBC『ナイトリー・ニュース』の人気キャスター、ブライアン・ウィリアムズの発言が波紋を呼んでいる。ウィリアムズは長年、03年のイラク戦争取材中に搭乗していたヘリコプターが被弾して墜落したと語ってきたが、先日、自身の番組でこれが作り話だったことを認めた。

 だがNBCはこの問題にほとんど触れず、系列のニュース専門局MSNBCもわずかに取り上げた程度。NBCが08年の大統領選でヒラリー・クリントンの「記憶違い」を激しく追及したときとは大違いだ。

 ヒラリーは当時、96年にボスニア・ヘルツェゴビナのツズラ空軍基地を訪れた時、着陸前に敵から銃撃されたと語っていた。だが実際は歓迎式典で8歳の少女が詩を朗読するなど、平穏無事だったことが明らかにされた。

 番組記録を見る限り、ウィリアムズ自身はヒラリーの発言に触れていない。しかしNBCとMSNBCは次のように、執念深くヒラリーを非難し続けた。

■08年3月23日『ミート・ザ・プレス』キャスターのティム・ラサート 「ワシントン・ポスト紙のコラム『ファクトチェッカー』に、『ツズラ空港で狙撃手に銃撃されたという彼女の話は断じて信用できない。写真や動画、取材記者の報告から浮かび上がる話は全然違う。ピノキオ度4だ』とあった。ピノキオ度4は、このコラムの嘘判定ランクで大ボラに当たる」

■08年3月25日『トゥデー』ホストのマット・ラウアー 「ヒラリー・クリントンは先週、『狙撃されたことは今も忘れない。空港で歓迎式典が行われる予定だったが、私たちは身をかがめて車に駆け込み、米軍基地に向かった』と言った。さて、私は自分一人でリトルリーグの優勝を勝ち取ったことを今も忘れない。もちろん事実に反するが、まあ10歳の頃の話だ。でも彼女はこれから大統領になろうという人物だ」

■同番組で政治コメンテーターのチャック・トッド 「ボスニア訪問に同行したコメディアンに裏を取った記者もいるが、話が食い違っていた。彼女は純然たる事実として話したが、用意された演説原稿にそんなことが書かれていたのなら、彼女の陣営の誰かがばかな大失態を犯したことになる」

■08年4月7日『ハードボール』キャスターのクリス・マシューズ 「(ライバルのオバマは)中傷キャンペーンを打つ必要がなくなった。今後は彼女の自慢話が真っ赤な嘘だったことを繰り返し語るだけでいい」
自慢話では済まされない

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