最新記事

アメリカ政治

次なる国防長官を待つ憂鬱と難題の日々

新国防長官に指名されたアシュトン・カーターを悩ませる、ホワイトハウスと苦しい予算

2014年12月12日(金)12時37分
クリストファー・ハーレス

妥協の人事? 国防総省勤務が長いカーターは最適任との声もあるが Chip Somodevilla/Getty Images

 チャック・ヘーゲル米国防長官の辞任発表を受け、オバマ大統領は先週末、後任としてアシュトン・カーター前国防副長官を指名した。

 指名承認をめぐる上院の公聴会が控えているが、国防総省での経験が長い民主党系のカーターは、前任者ヘーゲルよりはるかに温かく受け入れられるだろう。カーターは自分の頭で考えるタイプで、ホワイトハウスの操り人形にはなりそうにない。

 上下院で多数派となる野党・共和党がカーターの指名に反発する兆しはほぼないと、ワシントンのシンクタンク、ケイトー研究所の防衛・外交政策部門副責任者クリス・プレブルは言う。共和党の大物であるジョン・マケイン上院議員も先週、「非常に尊敬されている人物だ」と米メディアに語った。

 理論物理学の博士号を持ち、これまでオバマ政権で国防副長官を務めたカーターは、豊富な経験と頭脳の持ち主だ。国防予算を管理することも、省内の官僚主義に対処することもできる。

 とはいえ、カーターが次期国防長官に指名されたのは、共和党に対する妥協の結果ではないかという見方が強い。オバマは当初、国防責任者としての能力は劣っても従順な人物を望んでいたという声は多くある。

 前任者のヘーゲルはホワイトハウスからの干渉にいら立ちを募らせていたとされる。そのためオバマに「従順でなくなり、軍事費の増額などを要求したようだ」と、ブッシュ前大統領時代に国防次官を務めたエリック・エデルマンは言う。

 カーターの後任指名が確実になったのは、ミシェル・フロノイ元国防次官やジャック・リード上院議員が辞退を表明した後。ホワイトハウスの要求を満たし、共和党側も受け入れてくれそうな候補者の選択肢が限られてからだ。誰がオバマの第1希望だったかは不明だが、カーターではなかったと、プレブルはみる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英小売売上高、4月は前年比4.0%の大幅減 3月復

ワールド

豪中銀、インフレ予想を上方修正 25年半ばまで利下

ワールド

ピュリツァー賞、ロイターが2部門受賞 公益部門は米

ワールド

中仏首脳、イラン核問題の「政治的解決」訴え=中国国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 2

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中