最新記事

米人種問題

黒人射殺事件を引き起こした「利益追求型」警察

アメリカを揺るがす事件が起きた背景には、予算確保のため罰金徴収ばかりを重視する警察組織の問題がある

2014年8月19日(火)15時27分
ジョーダン・ワイスマン

続く衝突 黒人住民たちの怒りは収まらず、警官隊との衝突で負傷するデモ参加者も増え続けている Lucas Jackson-Reuters

 ミズーリ州ファーガソンで今月9日に起きた、警官による黒人青年射殺事件は今もアメリカ中を揺るがし続けている。「人種差別」だとしてこの事件に反発する黒人住民たちによる抗議運動は一向に鎮静化の気配を見せず、暴動や略奪に発展したこともあって非常事態が宣言される事態になった。

 そんななか、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された元ミズーリ州上院議員でニュースクール大学教授のジェフ・スミスの論説が話題となっている。彼は、ファーガソンでの衝突を引き起こした原因の1つは警察の利益至上主義だと主張。ささいなことで地域の黒人住民を逮捕したり違反切符を切ったり、嫌がらせをするのは、それによって予算を確保することができるからだと論じた。

 これはどういうことなのか。スミスの論説を見てみよう。


 セントルイス郡には90の地方自治体があり、ほとんどが個別の市役所と警察隊を持つ。その多くは収入を交通違反切符などの罰金に頼っている。セントルイスの非営利団体ベター・トゥゲザーによれば、ファーガソンの場合は収入の4分の1近くをこうした罰金で賄っており、周辺の町ではこの割合が2分の1に達するところもあるという。

 交通違反の取り締まりに収入を頼っている自治体では、少しでも多くの罰金を集めなければならないとの圧力がかかる。シカモアヒルズという町の場合、80メートルほどしか管轄内を走っていない高速道路にレーダーガンを備えた警官を配備している。


 ある都市圏を何十もの小さな地方自治体に分割すると、それぞれが互いの行政サービスを真似るようになり、結果としてかかるコストが跳ね上がる。かといって小さな自治体が、自らの警察署や消防署の運営費を確保するために税金を上げることは難しい。裕福な世帯ほど、簡単に近隣の自治体に引っ越せてしまうからだ。

 こうなると結果は明白。どんどん違反切符を切ることで自ら予算を確保する警察の誕生だ。そこにアメリカの警察機関における素晴らしき人種的力学が働き、黒人住民ばかりが道路で止められたり職務質問されたりといった事態が起きる。ファーガソンでは黒人より白人の運転手を止めたときの方が、違法な物品を発見する割合が高いにも関わらず、だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:メダリストも導入、広がる糖尿病用血糖モニ

ビジネス

アングル:中国で安売り店が躍進、近づく「日本型デフ

ビジネス

NY外為市場=ユーロ/ドル、週間で2カ月ぶり大幅安

ワールド

仏大統領「深刻な局面」と警告、総選挙で極右勝利なら
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名が海水浴中に手足を失う重症【衝撃現場の動画付き】

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 5

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 6

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 7

    米モデル、娘との水着ツーショット写真が「性的すぎ…

  • 8

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…

  • 9

    ウクライナ軍がロシアのSu-25戦闘機を撃墜...ドネツ…

  • 10

    国立新美術館『CLAMP展』 入場チケット5組10名様プレ…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 6

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 9

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中