最新記事

中東

米軍シリア介入とその大きな代償

シリア反体制派への武器供与を承認した議会に、デンプシー米統合参謀本部議長は泥沼化を警告

2013年7月24日(水)15時01分

次の局面へ 自由シリア軍などの反体制派への武器供与のリスクは高い Khalil Ashawi-Reuters

 マーティン・デンプシー米統合参謀本部議長は22日、連邦議会に提出した書簡の中で、シリア問題で米軍が実施できる5つの選択肢について説明した。

 デンプシーはアメリカによる介入は反体制派を強くするが、限定的な関与ですら期待と逆の結果を招く可能性が高いと述べた。

 デンプシーによれば、米政府から米軍に実施命令が出れば次のような行動に乗り出せる。反体制派への訓練やアドバイス、空爆の実施、飛行禁止空域や緩衝地帯の設置、さらに貯蔵された化学兵器の安全確保だ。

 彼はこうした介入が、「戦争行為に劣らない」ものになるだろうと警告した。「一度行動を始めたら、その後起きることに覚悟する必要がある」とも述べ、「さらなる関与は避けにくくなる」と説明する。

 シリアで飛行禁止空域を設置するのは、莫大な費用がかかる上に、複雑な作業になる。初期費用として5億ドルが必要になるが、その後も毎月、平均して10億ドルほどがかかると、デンプシーは言う。シリア政府によるミサイルや迫撃砲がアメリカの戦闘機を危険に及ぼすことにもなるだろう。

早ければ数週間以内に輸送

 反体制派を軍事的に訓練するのにも、年間5億ドルが必要だ。さらにそれにもリスクが伴う。

 デンプシーの書簡は、米議会が翌日、5983億ドルの防衛費について議論する中で提出された(結局、米上院と下院の情報特別委員会は武器供与承認で合意)。議会では、「茶会」の保守派やリベラルな民主党員が、議会の承認なくオバマ政権がシリアの反体制派に武器を供与するのを禁じようとしている。

 具体的に言うと、下院は仮にシリアへの行動が、大統領の指揮権を制限する戦争権限法に抵触するなら、シリア介入への資金を凍結するための改正を視野に入れている。

 上下院の委員会による武器輸送の承認で、CIAによる反体制派のための武器は、早ければ数週間以内にシリアに輸送される可能性がある。

 武器がイスラム過激派の手に渡るかもしれないという懸念があるにも関わらず、上下院の委員会は、シリアの反体制派の武装を手助けする米政権の計画にしぶしぶながら支持をした。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ウクライナの長距離ミサイル使用を制限 ロシア国

ワールド

米テキサス州議会、上院でも選挙区割り変更可決 共和

ビジネス

植田日銀総裁「賃金に上昇圧力続く」、ジャクソンホー

ワールド

北朝鮮の金総書記、新型対空ミサイル発射実験を視察=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 3
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく 砂漠化する地域も 
  • 4
    一体なぜ? 66年前に死んだ「兄の遺体」が南極大陸で…
  • 5
    『ジョン・ウィック』はただのアクション映画ではな…
  • 6
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 7
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 10
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中