最新記事

米大統領選

「オバマはアフリカ生まれ」を蒸し返すこの男

オバマはアメリカ生まれではないから大統領の資格なし、と言い張る不動産王ドナルド・トランプに、共和党の大統領候補ロムニーも迷惑顔

2012年5月30日(水)15時22分
タリア・ラルフ

支持は欲しいが トランプ(左)のオバマ攻撃にはロムニーも距離を置く Steve Marcus-Reuters

 バラク・オバマ米大統領はアメリカ生まれではなく、大統領の資格がない――不動産王のドナルド・トランプは、またもこの問題を蒸し返して大統領選の最重要争点にしようとしているようだ。一時は共和党から大統領選への出馬も検討していたトランプは、オバマの出生地疑惑をたびたび主張。昨年には、ホワイトハウスがオバマの出生証明書を公表することで事態は収まったかに見えた。

 ところがトランプは最近、CNNテレビの番組内の電話インタビューで、ホストのウォルフ・ブリッツァーと以下のような議論を戦わせた。


ブリッツァー:ドナルド、君に言っておかなければならないんだが、君の主張はちょっと滑稽に聞こえるようになってきたよ。

トランプ:それは君の方だ、ウォルフ。君の言っていることこそ滑稽じゃないか。私に質問したいのなら、答えさせてくれよ。

ブリッツァー:よし、じゃあ質問だ。1961年に、ホノルル・スター・ブレティン紙とホノルル・アドバタイザー紙が相次いで、ハワイでオバマが生まれたことを誕生欄に掲載した。この時から陰謀は始まっていたと言うのかい?

トランプ:この手の告示を出す人は多いが、アメリカで生まれたことにして恩恵を受けたいからだ。そうした事例は数多くある。アメリカで生まれていないのにやっている人は多い。周知の事実だ。


 同じ日の朝、トランプはさらにケーブルテレビ局CNBCにも電話出演。ここでもやはり、出生に関するオバマの説明は不十分だと主張した。オバマが1年以上前に出生証明書を公表しているにもかかわらず、だ。「何をもってしても私の考えを変えることはなかった」と、トランプは語った。

昔のプロフィールで疑惑再燃

 トランプが疑惑を主張し続けるのは、最近になって見つかったオバマの昔のパンフレットが発端のようだ。かつてオバマの著作権を扱っていた代理人が発行していた宣伝用のパンフレットのプロフィールに、ケニア生まれと誤って記載されていたのだ。これにより、オバマがアメリカ生まれのアメリカ人ではないという噂が、再び浮上することになった。

 CNBCによると、騒動後すぐに、このプロフィールを書いた担当者が名乗り出て、これは単なる事実確認のミスだったと釈明したという。

 トランプはCNBCでこう語った。「何年も前の90年代に、若かりしオバマが本を書いて、自分で出版社に提供したプロフィールについて、担当者が今ごろになって現れた。そして驚いたことに、『あ、間違えていました』と言われてもね」

 トランプの一連の発言は、共和党の大統領候補ミット・ロムニーのラスベガスでの集会にトランプが参加するほんの数時間前のことだった。だが、トランプの支持を受けて選挙戦を戦っているロムニーは、彼の発言からは距離を置いている。明確に非難したりもしていない。

「私は私を支持してくれているすべての人々の意見に賛同するわけではない。私の支持者も、私が信じることすべてに賛成してくれるわけではないだろう」と、ロムニーは先週語った。「だが私には過半数の国民の支持が必要だし、多くの善良なる人々が私を支持してくれていることには感謝している」

From GlobalPost.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米BofA、利益率16─18%に 投資家に中期目標

ワールド

トランプ関税の合憲性、米最高裁が口頭弁論開始 結果

ビジネス

FRB現行政策「過度に引き締め的」、景気にリスク=

ワールド

米、ICBM「ミニットマン3」発射実験実施 ロシア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇の理由とは?
  • 4
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 7
    若いホホジロザメを捕食する「シャークハンター」シ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中