最新記事

中間選挙

ティーパーティーのアブナイ外交政策

2010年11月2日(火)18時59分
モルト・ローゼンブルーム

 インディアナ州の候補者集会では、現職の民主党議員が科学的証拠を引用しながら「温暖化は人為的なものだ」と主張するとブーイングを食らった。「そんなのは真っ赤な嘘だ」と、電気工でティーパーティーの活動家でもあるノーマン・デニソンはニューヨーク・タイムズに語っている。「私は聖書を読んだ。神はこの地球を活用すべきものとして作ったのだ」。デニソンが現代的な「典拠」として挙げたのは、保守派の人気司会者ラッシュ・リンボーだった。

「建国の父」を一人も言えない

 共和党の上院議員候補のほとんどが、ディック・チェイニー前副大統領の10年前の主張――「人間に非はない」――を支持している。こうした信念のせいでティーパーティーは彼らが言うところの「主流メディア」と対立している。

 カンザス州の集会を取材した記者たちは「温暖化」や「アル・ゴア(元副大統領)」という言葉を持ち出すなと警告された。ジャーナリストがジャーナリストらしく振る舞うと、ティーパーティーが猛攻撃を仕掛けてくるからだ。移民政策も地雷の1つ。ティーパーティーの中でも特に過激な人々は、移民排斥主義を掲げた19世紀の政党「ノウナッシング党」に言及する。

 ワシントンにいる外国人特派員らは、ティーパーティー政治家の戦術は彼らが信奉するアメリカの価値観と真っ向からぶつかることがある、と皮肉たっぷりに指摘する。

 英フィナンシャル・タイムズ紙のエドワード・ルースは、世界最大の民主主義国でありながら国内に宗教的・経済的分断を抱えるインドから、アメリカに赴任してきた人物。彼は最近の記事で、ジャーナリストのトニー・ホップフィンガーが、ティーパーティーに支持される上院議員候補ジョー・ミラーにアラスカ州で会ったときのことについて書いている。

 ホップフィンガーが質問をしようと近付くと、ミラーが雇った警備員がホップフィンガーに手錠をかけたという。ティーパーティー候補たちは友好的なジャーナリスト以外はすべて避けることで、外交に関する無知を隠しているとルースは指摘する。

 それでも無知を隠せないのガ悲しいところ。保守系トーク番組の司会者グレン・ベックの手ぬるいインタビューを受けながら、ペイリンは自分がしょっちゅう言及する「アメリカ建国の父たち」を1人も思い出せなかった。

 もちろん彼らに一夜漬けの知識があったとしても、世界で唯一の超大国に危険な航海をしっかりと導いていってほしい、と思っている世界の国々にとっては慰めにもならないが。

 フィナンシャル・タイムズのルースの記事には、デラウェア州から上院議員を目指すクリスティン・オドネルのことも書かれている。彼女が言う「パキスタンについての計画」について、FOXニュースに尋ねられた時のことだ。

 オドネルはパキスタンを中東と呼び、陸軍参謀長を兼任していた最後の軍事独裁者パルベズ・ムシャラフ前大統領を称えた。民主主義国アメリカが奨励すべき模範的人物だ、と。

GlobalPost.com特約)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 5
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中