最新記事

メディア

新聞という過去の遺物を救済するな

2009年12月10日(木)16時07分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

 いいかげん新聞を神聖視するのをやめる必要もある。私はジャーナリストになって27年、ロマンあふれる昔ながらの記者魂を愛する気持ちは誰にも負けない。それでも最近、朝刊2紙(ニューヨーク・タイムズとウォールストリート・ジャーナル)の購読をやめた。玄関に取りに行ってリサイクル用の回収容器に入れることの繰り返しに、うんざりしたからだ。結局、1度も目を通さずじまいということもあった。

 実のところ、私が読みたいのは新聞の記事のごく一部で、それならパソコンやiPhoneで読めばいい。それに、ブログやツイッターを見れば、読むべき記事にたどり着ける。

お粗末過ぎる記事の質

「掘り下げた」素晴らしい情報を提供できるのは新聞だけだって?正直に言おう。典型的な日刊紙の仕事ぶりはお粗末だ。政治やスポーツやビジネスやセレブなど、あらゆる話題を少しずつ盛り込もうとするから、結果的にどれを取っても凡庸になる。

 自転車レースでも脳外科手術でもいいが、その道のエキスパートに、専門分野についての新聞記事を読んでどう思うか聞いてみるといい。きっと戸惑いを感じているはずだ。かみ砕き過ぎだし、専門知識のない人間が書いたことが見え見えだから。

 はっきり言って、多くの新聞はとにかくひどい。サンフランシスコ・クロニクルの行く末が案じられているが、同紙は何十年も前から新聞界の恥さらしだった。デトロイト・ニューズとデトロイト・フリープレスが窮地に陥っているのは自業自得。ミッチ・アルボムなんていいかげんなコラムニストを世に送り出したためでもあるが、2紙とも本当にひどいからだ。

 ボストン・グローブは私にとって地元紙だが、独善的で偏狭で、文章があきれるほど下手だ。大学新聞かと思うような記事もかなりある。こういう無愛想でくだらない過去の遺物が突然姿を消したところで、誰が困るだろう。

 新聞を救おうなんてばかな考えは捨ててもらいたい。救えるわけがない。新聞は死ぬ運命にある。いたずらに苦痛を長引かせ、インターネットへの移行を遅らせても、誰のメリットにもならない。 

[2009年11月18日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

EUエンジン車禁止撤回の影響注視、競争環境変化に日

ビジネス

午前の日経平均は反発、前日安から買い戻し イベント

ワールド

中国最新空母「福建」、台湾海峡を初めて通過=台湾国

ワールド

トランプ氏、ベネズエラ出入港の制裁対象タンカー封鎖
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中