最新記事

テレビ

カリスマ司会者オプラ「終了」の衝撃

全米で絶大な人気を誇るオプラ・ウィンフリーの長寿トーク番組が終わる。彼女ほどアメリカ国民が共感しあうことを可能にした人物はほかにいない

2009年11月30日(月)18時03分
エリス・コース(本誌コラムニスト)

国民の「お姉ちゃん」 人々がお互いの違いより共通点に目を向ける手助けをしてきたオプラ Siphiwe Sibeko-Reuters

 いずれその時が来ることは分かっていたはずだった。それでも私たちは、完全には心の準備ができていなかった。11月半ば、オプラ・ウィンフリーが20年以上続いてきたテレビのトークショーを終了する意向を明らかにした。

 その後はケーブルテレビの世界に軸足を移すようだ。賢明なビジネス上の戦略なのだろう。昼間の地上波テレビのトークショーは、この10年以上、視聴率が深刻に落ち込み続けている。

 もっとも、地上波のトークショーが息絶えたわけではない。その証拠に、(番組終了は2年先の11年9月だというのに)私たちは「次のオプラは誰だ」という話題で盛り上がっている。

ペイリンとは正反対の資質

 実際のところ、どの「候補者」もウィンフリーに及ばない。フィル・マグローは毒舌キャラを確立しているが、精神科医のわりにはやさしさが足りない。エレン・デジェネレスはレズビアンであることを公言し、社会の同性愛者受容を推し進めたのは立派だが、聡明さより滑稽さを前面に押し出したがるきらいがある。

 前アラスカ州知事のサラ・ペイリンの名前も挙がっている。もし選挙に立候補しないのであれば、テレビのトークショーのスーパースターになれるのではないかという声がある。しかし、ペイリンは人々を結束させるより、分裂させることに長けた人間だ。

 ペイリンとは対照的に、ウィンフリーは、ほとんど共通点のない人々が1つの同じコミュニティーの一員だという意識を共有できるようにする上で大きな貢献をしてきた。それを可能にしているのは、親身になって先入観なしにゲストの言葉に耳を傾ける姿勢だ。

 父親にレイプされた経験があっても父親のベッドに入った女優のマッケンジー・フィリップスや、性的衝動に負けて男娼と関係を持った牧師のテッド・ハガード。テレビの前の視聴者はウィンフリーと一緒に、このような人たちの話を聞き、理解しようと努力する。もしウィンフリーが娯楽や刺激だけを求めてこの種の話題を取り上げているのであれば、視聴者はそういう気持ちにならないだろう。

 確かに、お涙頂戴の作り話にあっさりとだまされて、いかがわしい人物にお墨付きを与えてしまうことも少なくない。しかし、1人の人間の物語の表面だけでなく、その物語に関して私たちすべてに共通する要素に目を向けさせることにかけて、ウィンフリーの右に出る者はない。

オバマでも「後任」は務まらない

 黒人であることを考えると、この20数年間にウィンフリーが成し遂げた業績はとりわけ大きい。番組がスタートしたとき、黒人女性がアメリカ国民全体の「お姉ちゃん」的な存在になる日が訪れようとは誰も思っていなかった。

 ウィンフリーは、さまざまな面でバラク・オバマが黒人初のアメリカ大統領として登場する下地もつくった。何しろオバマがまだロースクールにいたとき既に、極めて多様な層との間に懸け橋を築く方法を実践していたのだ。

 テレビの世界にあって、ウィンフリーはブレることなく、威厳を保ち続けてきた。ときには際どい話題を取り上げることもあったが、人々にショックを与えることより称賛することを、疎外することより結束させることを常に重んじてきた。

 そんなウィンフリーの代わりが務まる人物などいるのか。まったく見当たらない。オバマは大統領選の選挙運動中に数々のウィンフリー的な資質を発揮したが、大統領になってからは党派対立の足かせから逃れられずにいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バンス米副大統領、パキスタンのシャリフ首相と会談

ワールド

米が資産凍結解除に同意とイラン筋、米当局者は否定

ワールド

ガザ平和評議会、資金不足報道否定 「要請全額満たさ

ワールド

情報BOX:米とイラン和平交渉、知っておくべき主な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 5
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 6
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 7
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 10
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中