最新記事

アメリカ政治

オバマ医療改革はずっこけるかも

2009年7月21日(火)19時17分
ハワード・ファインマン(ワシントン支局)

トルーマン大統領の夢に近づくか

 確かに、病院や医師や介護要員はより厳しく規制されるし、メディケア(高齢者医療保険制度)やメディケイド(低所得者医療保険制度)予算もカットされるだろう。だが今後も現在と同じ構造と機能が保たれる。

 確かに、多くの人々が税金による補助で保障を受けられるようになるだろう。だが誰もが機能不全で持続不可能だと認めているシステムに人々を放り込むことになる。

 オバマはなぜ勢いを失いつつある波の上でサーフボードに乗っているのか。1つは、彼が民主党議員らの妥協案をまとめることができると信じているから。民主党の議席数からすると、そうすれば理論上は法案を通せる。オバマは自分の説得力と細部に関する辛抱強さが勝つと信じている。そして、すべての人々が医療保険に加入できるような制度を自分が作った、と宣言したがっている。

 だが厳密に言えば、3法案がオバマの狙いを実現することはできない。これらの法案には、すべての国民が医療保険に加入できるとは直接書かれていない。だが国民に加入を義務付け、保険会社にも保険を売ることを義務付けて、そして保険に加入する経済力を持たない人々に補助金を出すことで、半世紀以上前にハリー・S・トルーマン大統領が提唱した国民皆保険制度にこれまでで最も近づくことができるのだ。

 オバマはこう言いたいのかもしれない──「私はトルーマンの約束を果たした」と。言い換えれば、「私が歴史をつくった」と。だが波乗りオバマは今、ビーチから程遠い場所にいる。そして潮流がどちらに向いているのかは誰にも分からない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ輸出、5月は予想以上の減少 米国向けが2カ月

ビジネス

中国自動車販売、6月は前年比+18.6% 一部EV

ワールド

ガザ停戦は可能、合意には時間かかる=イスラエル高官

ワールド

アングル:中国人民銀、関税懸念のなか通貨安定に注力
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 5
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    米テキサス州洪水「大規模災害宣言」...被害の陰に「…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 10
    中国は台湾侵攻でロシアと連携する。習の一声でプー…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 8
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 9
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中