最新記事
考古学

エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明かす意外な死の真相

Mummy’s Dark Secret

2024年10月11日(金)10時50分
イアン・ランドル(本誌科学担当)
苦痛に顔をゆがめているような女性のミイラは輸入された高価な防腐剤で処理されていた(写真はイメージです) Andreea Munteanu-Unsplash

苦痛に顔をゆがめているような女性のミイラは輸入された高価な防腐剤で処理されていた(写真はイメージです) Andreea Munteanu-Unsplash

<1935年に発見された苦悶の表情をしている女性のミイラ、最新技術を用いた分析によって長年の謎に答えが見えてきた>

1935年、エジプトの中東部ルクソール(旧テーベ)に近い共同墓地を発掘していた考古学者のチームは、気になるものを見つけた。それは高齢の女性のミイラ。口が開き、恐怖のあまり叫んでいるような表情だった。

【画像】エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明かす意外な死の真相


さらに謎なのは最近、この「叫ぶ女」をCTスキャンしたところ、臓器が残っていると判明したことだ。普通なら防腐処理の際に取り除かれるはずだ。約3500年前のミイラ化の作業に落ち度があり、女性の口が開いてしまったのか。だとしたら、処置した者が埋葬前に口を閉じるのを怠っただけではないのか──今まではそう考えられていた。

だが今回、カイロ大学とエジプト観光・考古省の研究者らの調査から全く別の説が導き出された。女性は実際に苦しみながら死んだというのだ。

「この女性は輸入された高価な防腐剤で処理されたことが分かる」と語るのは、カイロ大学カスル・アル・アイニ病院の放射線科医サハル・サリーム。彼女は8月初め、このミイラに関する新たな論文を筆頭執筆者として発表した。「しかも保存状態がよいことは、内臓を取り除かないとミイラ化がうまくいかないという通説と矛盾する」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請件数、1万件減の21.4万件 継

ワールド

EU・仏・独が米を非難、元欧州委員らへのビザ発給禁

ビジネス

中国人民銀、為替の安定と緩和的金融政策の維持を強調

ワールド

ウクライナ和平の米提案をプーチン氏に説明、近く立場
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 6
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 7
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    【投資信託】オルカンだけでいいの? 2025年の人気ラ…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中