最新記事
サイエンス

南極「終末の氷河」に崩壊の危機、最大3m超の海面上昇、バングラデシュ水没に【最新報告書】

The “Doomsday” Glacier

2024年10月10日(木)18時25分
トム・ハワース(本誌自然・科学担当)
スウェイツ氷河

この30年間に後退が加速しているスウェイツ氷河が消失すれば、影響は計り知れない NASAーZUMA PRESS/AFLO

<厚さ1km、幅1200kmのスウェイツ氷河が、数世紀以内に大幅な海面上昇を引き起こすという報告書が発表された。崩壊すれば、世界各地の沿岸地域に重大な影響が...>

「終末の氷河」が、数世紀以内に大幅な海面上昇を引き起こす──。不吉な通称で知られる南極西部のスウェイツ氷河を研究する科学者らが、暗い見通しを明らかにした。

スウェイツ氷河の変動は、世界各地の沿岸地域に重大な打撃を与える可能性があり、国際社会の懸念の的になっている。


英米の調査プロジェクト、国際スウェイツ氷河共同研究(ITGC)は2018年から、巨大なスウェイツ氷河を綿密に調査。9月19日に発表した報告書では、氷の消失が警戒すべきペースで進行していると指摘し、氷河崩壊リスクの上昇を示唆している。

「80年以上前から続くスウェイツの後退は、この30年間に大幅に加速している。後退の規模と速度は今後、さらに増加する見込みだ」と、ITGCの科学コーディネーターで、英国南極観測局(BAS)の海洋地球物理学者、ロブ・ラーターは声明で述べている。

スウェイツ氷河は幅約120キロで、厚さ約1000メートル。崩壊すれば、その影響は壊滅的だ。低地のバングラデシュや太平洋諸島が水没の危機にさらされ、BASによれば、ニューヨークやロンドンが直面するリスクも増大する。

「スウェイツは南極の頸動脈と言っていい」と、ITGCに参加する氷河学者で、米ポートランド大学助教(環境学)のカイヤ・リバーマンは語る。「ダメージを受ければ、影響は計り知れない」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ベラルーシ大統領、米との関係修復に意欲 ロシアとの

ビジネス

ECBが金利据え置き、4会合連続 インフレ見通し一

ワールド

ロシア中銀、欧州の銀行も提訴の構え 凍結資産利用を

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 8
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 9
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中