最新記事
生物

昔のパンダは「竹ではなく肉を食べていた」「ヨーロッパにもいた」...驚きの連続!?【最新パンダ研究】

Before Adopting Their Bamboo Diet, Pandas Lived in Europe and Ate Meat

2024年9月19日(木)11時34分
トム・ハワース
2匹で並んで竹を食べるパンダ

Nick115-Pixabay

<パンダが竹を食べるというイメージはミスリード──最新研究で古代パンダの歯を分析すると驚きの食性が明らかに>

ドイツ・アルゴイ地方のハンマーシュミーデ遺跡で発掘された「パンダの祖先」の化石を研究していたチームが、初期のパンダは、竹を好む現代の子孫と比べて、はるかに多様な食生活を送っていたことを発見した。

【関連動画】「完全に真っ白」...世界で唯一?「アルビノ」のジャイアントパンダ

クレトゾイアルクトス・ベアトリクス(Kretzoiarctos beatrix)は、現代のジャイアントパンダの最も古い祖先と考えられている。この種は約1150万年前、現在パンダが生息している中国の竹林からは遠く離れた、ヨーロッパ全域やユーラシア各地に生息していた。

この研究論文の共同執筆者である独テュービンゲン大学のマデレーン・ベーメは本誌の取材に対し、「パンダが草食になり、竹などの植物を食べるようになったのは比較的最近のことだ」と述べた。

「パンダが竹を食べるというイメージはミスリードだ。彼らは1000万年もの間、竹を口にしておらず、植物もあまり食べていなかったのだから」

学術誌「Papers in Paleontology」に発表された研究論文によれば、クレトゾイアルクトス・ベアトリクスは現代のヒグマよりは小型だが、体重は100キロを超えていた。

歯には竹を食べる子孫と類似点があるものの、マクロとミクロ両方の視点から特徴を分析した結果、はるかに幅広い食性が明らかになった。

他のクマと比べてみると...

研究チームは、クレトゾイアルクトス・ベアトリクスの歯をさまざまなクマ科の動物と比較した。ヒグマ、ホッキョクグマ、絶滅種と現生種のジャイアントパンダなどが対象だ。結論は? 古代のパンダは硬い植物のスペシャリストではなかったし、純粋な肉食動物でもなかった。

マクロレベルで見ると、多種多様な食べ物を処理できる歯の形をしており、大まかな食性の手掛かりが得られた。ミクロレベルでは、歯の表面に骨などの硬い粒子が接触してできた傷やへこみが確認でき、それは同種が雑食性だったことを示唆していた。

ベーメは声明の中で「これらの結果は、クマの進化とジャイアントパンダの草食化を理解するうえで重要だ」と述べている。「最古のジャイアントパンダであるクレトゾイアルクトス・ベアトリクスは雑食だった。現代のパンダのような食性になったのは、進化の歩みのかなり後になってからだ」

ハンマーシュミーデ遺跡は2019年、初期の直立歩行の類人猿であるダヌビウス・グッゲンモシの化石が発見されたことで有名になった。以来、166種もの動物の化石が発見され、1150万年前の豊かな生態系が明らかになろうとしている。

「私たちはこの遺跡で、驚くほど多様な28種類の肉食動物を発見した。世界中の熱帯の生態系を見回しても、これほどの多様性はほとんど見られない」とベーメは話す。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:値上げ続きの高級ブランド、トランプ関税で

ワールド

訂正:トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 10
    オーランド・ブルームの「血液浄化」報告が物議...マ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中