最新記事
AI

「テック企業経営者としては異例」...チャットGPTのCEOが世界中の指導者に「挨拶回り」に行く理由とは?

A Charm Offensive

2023年6月29日(木)18時00分
リシ・アイエンガー
アルトマンCEO, マクロン仏大統領

アルトマンCEOはマクロン仏大統領ら世界各国で首脳と会談してきた(パリ、5月23日) YOAN VALATーPOOLーREUTERS

<6月前半だけでも日本を含む11カ国へ。オープンAIのサム・アルトマンCEOがスター顔負けの「世界ツアー」を敢行するのはなぜか>

昨年11月に発表されて以来、世界を驚きと興奮と不安に陥れている対話型AI(人工知能)チャットGPT。その開発元である米新興企業オープンAIのサム・アルトマンCEOが、ロックスターも顔負けの壮大な「世界ツアー」を敢行している。

6月前半だけでも、イスラエル、ヨルダン、カタール、アラブ首長国連邦、インド、韓国、日本、シンガポール、インドネシア、オーストラリアを訪問。各地で学生やベンチャー投資家、そして政府首脳との面談を実現している。

それもインドのナレンドラ・モディ首相や韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領、イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領など、昨年まではアメリカでもほとんど知られていなかった起業家の相手としては、異例のVIPばかりだ。

さらにその合間に、アルトマンは北京で開催されたAI専門家の会議にもオンライン出演。AI技術の安全な開発のために「グローバルな協力」を進めることや、米中の研究者の交流拡大を呼びかけるなど、少しばかり外交官じみた発言までしている。

ただ、世界のリーダーたちがAIに大きな関心を示している今(それ自体、チャットGPTの登場がきっかけなのだが)は、彼らに話をする絶好のタイミングと言える。なにしろどの国の政府も、イノベーションの奨励と規制の両面で世界的な優位に立とうと躍起になっているのだ。

「先輩」たちの失敗に学ぶ

そんな彼らに、アルトマンはAI技術の利点と危険性の両方を説き、その推進と安全対策を求めることで、自社にとって有利な規制体制を構築しようとしている。

実際、ほとんどの国でAI規制は手探りの状態だ。辛うじてEUでは、欧州議会が6月14日に包括的なAI規制法を可決したが、それが欧州委員会と閣僚理事会を経て、実際に運用されるようになるのは、早くて2025年後半になるだろう。AI先進国であるアメリカと中国では、規制の動きはもっと鈍い。

SDGs
「SDGs認証」の可能性とは?...日本サステナブルビジネス機構(JSBO)が有識者フォーラムを6/10に開催
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

金融政策の先行き見通せず、経済予測不安定=フィラデ

ワールド

トランプ氏、マスク氏企業の政府契約打ち切り示唆 テ

ワールド

米・カナダ首脳、関税巡り直接協議=カナダ産業相

ビジネス

関税によるインフレ再燃を警戒、全容判明に時間必要=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット騒然の「食パン座り」
  • 3
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪んだ認知
  • 4
    女性が愛馬に「後輩ペット」を紹介...亀を見た馬の「…
  • 5
    韓国新大統領にイ・ジェミョンが就任 初日の執務室で…
  • 6
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 7
    壁に「巨大な穴」が...ペットカメラが記録した「犯行…
  • 8
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    ウーバーは絶体絶命か...テスラの自動運転「ロボタク…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 4
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 7
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 8
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 9
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 10
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 9
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中