最新記事

東京が植物工場の一大拠点に? テクノロジーが導く「食と農業」の未来

2021年10月19日(火)18時00分
※TOKYO UPDATESより転載
「PLANTORY tokyo」で栽培中のレタス

植物工場兼研究施設「PLANTORY tokyo」で栽培中のレタス

<「食と農業」が抱える問題を解決するために注目されている「植物工場」。なかでも、世界初のテクノロジーを採用した東京のベンチャー企業が生み出す野菜は、安全性やコスト面だけでない付加価値が期待されている。都市だから実現できる新たな農業とは?>

世界初の密閉型栽培で高品質な野菜を

農業従事者の後継者不足や異常気象による食物の安定性低下など、「食と農業」にまつわる問題には様々な側面がある。そこでいま注目されているのが、植物工場だ。

植物工場は、屋内で植物の生育環境をコントロールしながら栽培することで、気候や季節に左右されずに、どこでも野菜が栽培できる。農業従事者の減少に対応する策のひとつとしても期待され、日本における植物工場の運営市場規模は、2025年に6700億円(設備・プラント含む)規模になるという予想もある。

なかでも、最先端テクノロジーを採用して従来の植物工場の一歩先を行くのが、東京・京橋にある植物工場兼研究施設「PLANTORY tokyo」だ。この施設を設立した株式会社プランテックスは、モノづくりが得意なエンジニア集団が立ち上げたベンチャー企業。代表の山田耕資氏は「植物工場は次世代の農業を支えるキーテクノロジーになる可能性を秘めていると考え、『Culture Machine』の開発に至った」と話す。

「Culture Machine」とは、同社が開発した世界初の密閉型の植物栽培装置。光・空気・肥料・水などの環境条件を緻密にコントロールするシステムを独自開発し、従来の植物工場よりも高品質で安定性の高い野菜の生産を可能にした。

syokubutsu02.jpg

省面積で野菜を栽培できるため、都心の狭い土地も有効活用できる

京橋という街を選んだのは、江戸時代から昭和初期まで青物市場が存在し、東京の食文化を支えてきたという象徴的なエリアでもあったためだという。また、東京駅の近くという好立地は海外からも足を運びやすく、多くの人の目に触れてもらうことができる。

さらに、東京のような都市に植物工場を建てることで、フードマイレージを抑えながら、鮮度の高い野菜を届けられる。輸送中のフードロス削減や環境負荷の軽減にもつながるのだ。同社ではすでに2020年から、植物工場で作ったレタスを都内のスーパーマーケットに卸しているが、評判もよく、売れ行きも好調だという。

美容・健康分野への応用にも期待

プランテックスの「Culture Machine」には、高品質な植物を高効率で育てられるようになる以外の可能性も秘められているという。より高い付加価値のついた作物の生産も期待されているのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

情報BOX:パウエル米FRB議長の会見要旨

ビジネス

FRB、5会合連続で金利据え置き 副議長ら2人が利

ワールド

銅に50%関税、トランプ氏が署名 8月1日発効

ワールド

トランプ氏、ブラジルに40%追加関税 合計50%に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中