最新記事

テクノロジー

ファーウェイ制裁の不透明な真実、グーグルはNGだがマイクロソフトはOK?

2021年7月27日(火)15時55分
高口康太(ジャーナリスト)
ファーウェイのロゴ

lcva2-iStock.

<日本市場での挽回を喫し、ファーウェイが新製品を発表。グーグルのアンドロイドOSを使えないことが重しとなっているが、一貫しない制裁の実態に取引先や消費者も振りまわされている>

「ファーウェイ、ここにあり。過去最大数の新製品発表でアピールしたいと考えています」

7月13日、中国通信機器・端末大手のファーウェイは日本市場向けコンシューマー製品の発表会を開催した。パソコン2機種、タブレット1機種、ディスプレイ3機種、さらにイヤホン2機種にスマートウォッチと、盛り沢山のラインナップをそろえてきた。

もともと電話会社向けの通信設備機器を作るメーカーだったファーウェイは一般消費者にとってはなじみの薄い存在だったが、携帯電話を突破口としてコンシューマー分野で成功。スマートフォン出荷台数で2019年に米アップルを抜き、世界2位の地位を築いた。

日本でもドコモやソフトバンクのキャリア携帯に採用されるなど、着々とシェアを高めていたが、2019年に米政府による輸出規制を受けた影響で、この2年あまりは日本市場での展開に苦しんできた。

そこで大量の新製品を投入し、注目を取り戻そうというわけだ。

takaguchi20210727huawei-2.jpg

新製品の「Matepad 11」を手にするファーウェイデバイス日本・韓国リージョンプレジデントの楊涛(ヤン・タオ) Huawei

それらの新製品からは、ファーウェイの苦闘のみならず、「グーグル以外の制裁」をめぐる複雑で不透明な状況も透けて見える。日本の消費者やメーカーは、今も続くファーウェイ問題をどのように考えればいいのか。

◇ ◇ ◇

ここでは発表された新製品すべてに言及はしないが、注目の製品を挙げるなら、タブレット「Matepad 11」だろう。日本で初めて発売されるハーモニーOS搭載機となる。

ハーモニーOSは、米国の制裁によりグーグル・モバイル・サービス(GMS)が利用できなくなったファーウェイが独自に開発したOSだ。オープンソース版のアンドロイド(AOSP)をもとに開発されたため、アンドロイドOSの既存機種と使用感はほとんど変わらない。言われなければハーモニーOSと気づかない人も多そうだ。

処理性能を決める半導体部品のSoC(システム・オン・チップ)には高性能な米クアルコムのスナップドラゴン865を採用していながら、5万4800円(メーカー希望価格)と価格を抑えた。ハードウェア単体で考えると、日本で販売されているタブレットの中では抜群のコストパフォーマンスだろう。

ただし、ファーウェイのスマホと同じく、GMSが使えないという問題は変わらない。どういうことかと言うと、YouTubeやGoogle Maps、Gmailなどグーグル社のアプリが使えないだけでなく、アプリをインストールするための「Google Playストア」はないし、他社のアプリでもGMSの機能を活用している場合には作動しないことが多い。

筆者は現在、「P40 Pro」を利用している。日本で発売された最後のファーウェイ製スマートフォンだ。オープンソース版のアンドロイド(AOSP)が搭載されており、ぱっと見では普通のスマホと変わりはない。YouTubeやGmailのアプリはインストールできないが、ブラウザ経由から使うことはできる。

これなら文句はないと言いたいところだが、実は細かなところで不便が残る。最近のスマホで便利なのはパソコンとの連携だ。パソコンのブラウザでパスワードを保存しておけばスマホのブラウザでもワンタッチで呼び出せる。ところが、この手の連携機能はほとんどGMSが活用されているのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中