最新記事

インタビュー

ロボットに「居場所」ができるのは、人々に飽きられたとき──クリエイター・吉崎航の見据える夢

2020年6月17日(水)17時30分
Torus(トーラス)by ABEJA

Torus 写真:西田香織

ロボットの要となるソフトウエアの世界を牽引してきたクリエイター、吉崎航さん。横浜に計画中の「動く実物大ガンダム」など、話題のプロジェクトにもかかわってきた。

そんな彼にあえて聞いた。「人間がいるのに、なぜ代替物のロボットに興味を持つんですか?」

語りだした、吉崎さんの世界観とは。

◇ ◇ ◇

吉崎:「人間がいるのに、なぜ代替物のロボットに興味を持つのか?」という質問、すごく面白いですね。そうか、そういう風にロボットを見るんだなあ、と思いました。

ロボット=代替物という考え方は一面では正しい。でもそれだけじゃありません。「ロボットって何だろう?」と考えたとき、ほかにもいろんな"意味"が見えてきます。

ロボットといえば、ヒト型のものを思い浮かべる人が多いと思います。そのヒト型ロボットに限っても3つの種類があると、私は考えています。

1つ目は人間の「拡張」。「強くなりたい」「あと5メートル腕が長ければいいのに」「もっと速く走れたら」。われわれのそんな欲求に応えてくれるロボットです。知られたところでいうと、『マジンガーZ』や『機動戦士ガンダム』のような巨大ロボット。それからパワードスーツや、ある種の乗り物も含まれます。

2つ目が、ご指摘のあった人間の「代替」。『鉄腕アトム』も、もとは自分の子どもの代わりという設定でした。掃除ロボットや警備ロボットなど、特定の仕事だけ代替するロボットも含まれます。

3つ目は「媒体」。離れた場所からコミュニケーションや仕事ができるアバターロボットなどがこれですね。すでに様々な分野で使われ始めています。離れて暮らす友だちとの「つながり」をロボットに託す。昔からある電話やテレビ電話のたんなる延長ではなく、身体を使ったコミュニケーションや仕事ができるようになります。

Yoshizaki2.jpg

吉崎:「こんなのがあったらいいな」という対象としての"実在しないロボット"は、ロボットという言葉が生まれる、はるか以前から存在していました。私が知る範囲で一番古いのは、ギリシャ神話に出てくる青銅製の自動人形「タロス」。クレタ島を守るために作られたと伝えられていますが、これが世界初の「警備ロボット」のアイデアだったかもしれません。

こんな風に人がヒト型の何かに役割を求めるのは当たり前の欲求だ、と私は思います。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え

ビジネス

焦点:米中貿易休戦、海外投資家の中国投資を促す効果
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 8
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 9
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中