最新記事

サイエンス

地球温暖化の解明なるか 南極の「棚氷」分析に挑む科学者たち

2019年2月26日(火)17時32分

氷の壁

棚氷は、南極の氷が海に拡散するのを防ぐ壁の役割を果たしている。氷山の分離は数世紀単位で起きているが、近年では分離の頻度が上昇している。

1月に発表された研究によると、南極から分離した氷の量は、2009─2017年は年間2520億トンで、1979─1990年の同400億トンから増加している。

「過去にも巨大な氷山が分離したことはある。だが、そうした分離が段階的に起きたものか、それとも現在われわれが観測している分離のように瞬間的に起きたのかは分かっていない」と、マクドネル氏は説明した。

チリの観測基地がある南極半島は、氷の溶解の影響を最も受ける地域の1つとして注目されている。科学者らは、海に露出している部分が大きいためとみている。

「温暖化とこうした氷山の崩壊(の相関)プロセスを示す、長期的な傾向がある」と、マクドネル氏の研究チームに参加するチリの氷河学者フランシスコ・フェルナンドイ氏は言う。

オランダやその他数カ国の島国などが、研究結果を待ち望んでいる。グリーンランドや南極を覆う氷が全て解ければ、海面が10メートル上昇し、これらの国が水没すると、INACHのデータが示している。

氷を読む

マクドネル氏とそのチームは、航空機や船、ヘリコプターやスキーを使い、モラー棚氷への長い旅に出発した。モラー棚氷自体も、昨年末に長さ1.6キロの氷山を失っている。

南極は夏だが、チームはブリザードや零下の気温を乗り越え、間もなく訪れる冬の前に2週間かけてさまざまなサンプルを採取する。

レーダーを使って氷山の大きさを計測するほか、氷床コアの採取も行う。これを使えば、過去の大気の状況などを推定することができる。

氷床コアは、チリ中部にある専門の研究機関に運ばれ、マイナス20度に保たれた研究室で分析される。

チームに参加する科学者は、将来的な氷の溶解モデルを作り上げ、それが気候変動に対応するための各国の合意の土台となることを願っている。

「われわれには政治的な決断はできないが、シナリオを予測することはできる。もし気温が上昇、または現状維持や下落した場合、それぞれのケースでどういうことが起きるかを推測できる」と、前出のフェルナンドイ氏は話す。

「それがわれわれができる貢献だ。決断そのものは、別の次元の話だ」

(翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)

Fabian Cambero

[キングジョージ島(南極) 15日]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スイス・スキーリゾートのバーで爆発、約40人死亡・

ワールド

台湾総統「26年は重要な年」、主権断固守り防衛力強

ワールド

再送トランプ氏、シカゴやLAなどから州兵撤退表明 

ビジネス

ビットコイン、2022年以来の年間下落 最高値更新
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 2
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 5
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    「断食」が細胞を救う...ファスティングの最大効果と…
  • 9
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 10
    米中関係は安定、日中関係は悪化...習近平政権の本当…
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中