最新記事

日本人が知らない 自動運転の現在地

本当のMaaSは先進国のフィンランドでもまだ実現できていない

THE RISE OF THE BACK-SEAT DRIVER

2019年2月13日(水)06時50分
デービッド・ジッパー(ベンチャーファンド「1776」マネジング・ディレクター)

ハードウエアの技術開発とソフトウエアの革新が移動の概念を変える COURTESY OF VOLVO

<交通機関の垣根を飛び越えてシームレスな移動を目指すMaaSが、世界的に注目されている。50都市に進出する計画で、自律走行車の普及にも役立ちそうだが、先駆者であるWhimにもまだ課題がある>

※2019年2月19日号(2月13日発売)は「日本人が知らない 自動運転の現在地」特集。シンガポール、ボストン、アトランタ......。世界に先駆けて「自律走行都市」化へと舵を切る各都市の挑戦をレポート。自家用車と駐車場を消滅させ、暮らしと経済を根本から変える技術の完成が迫っている。MaaSの現状、「全米1位」フォードの転身、アメリカの自動車ブランド・ランキングも。

◇ ◇ ◇

自律走行車(AV)が市場に出ても、すぐには気軽に買えそうにない。最初は1台25万ドルとも言われている。価格がある程度下がっても、一家に1台とはなかなかいかないだろう。配車サービスのウーバーやリフトで車を呼ぶように、必要なときにAVを借りるところから始まりそうだ。

移動手段としては、電車やバス、自転車、さらには徒歩など、もっと安いものや空間効率の高いものがたくさんある。むしろ、さまざまな手段や事業者を統合して、検索から予約、支払いも一度に済ませることができれば便利ではないか。それがMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス=サービスとしての移動)の概念だ。

MaaS先進国のフィンランドでは、MaaSグローバル社のアプリ「Whim(ウィム)」が2017年11月から首都ヘルシンキでサービスを提供している。Whimには公共交通機関のほか、タクシー、自転車や自動車のシェアリングサービスなどさまざまな企業が参加。アプリで行き先を検索して経路を選んだら、複数の移動手段の予約や支払いをまとめて済ませることができる。月額49ユーロまたは499ユーロの乗り放題プランもある。

タクシーが来ないから電車に変えるなど、移動中に問題が生じたらWhimのカスタマーセンターが対応する。MaaSグローバルによると、2018年10月までに約180万件の利用があった。

MaaSが世界的に注目されるようになり、Whimはベルギーのアントワープと英バーミンガムでもサービスを開始。シンガポールでも近く本格的に稼働し、2020年までに50都市に進出する計画だ。

アメリカではウーバーやリフトがいち早くMaaSに賛同し、定額プランや、自転車など車以外のシェアリングサービスを展開している。リフトの定額プランは月299ドルで30回まで利用できる。将来的には、同社が提供している自転車や乗り捨て可能の電動スクーターのシェアリングサービスも利用できるようになるだろう。

MaaSのユーザー基盤は、AVを普及させる格好の手段になる。定額プランに追加料金を払ってAVのシェアリングを利用できるようにするなど、AVを都市の交通網に組み込みやすいだろう。

MaaSの利便性が高まれば、自家用車の代わりに配車サービスやカーシェアリングを利用する人が増えて、駐車場として使われている都市部の貴重な空間を有効活用できる。

【関連記事】自動運転で都市はこんなに変わる 駐車場は48%削減──ボストンの挑戦

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マスク氏のスペースX、xAIを買収 宇宙・AI事業

ワールド

米、ミネアポリスで連邦捜査官にボディーカメラ配備 

ワールド

米議会、政府閉鎖終結へ合意近い=トランプ氏

ビジネス

ビットコイン、数日間で26億ドル資金流出 悪材料重
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 2
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 3
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 4
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 5
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 6
    エプスタイン文書追加公開...ラトニック商務長官、ケ…
  • 7
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 8
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタ…
  • 9
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 10
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中