2030年までの達成は困難...それでも日本企業は「ビヨンドSDGs」と「三方良し」で勝つ?【第3回SDGsアワード】
Thinking Beyond the SDGs
電力を使わない自動ドアを製造するNewtonプラスの川那辺博康社長(手前)。全受賞者に、環境に配慮した印刷技術を用いて制作した表彰状が授与された(右奥) PHOTOGRAPH BY SEIJI TONOMURA
<第3回となるニューズウィーク日本版「SDGsアワード」授賞式開催。最優秀賞は、社長が60代で起業した「電力を使わない自動ドア」メーカーだ――>
センサーで人を検知して、モーターで扉を開閉する──自動ドアに対して「環境を破壊している」と考える人は少ないだろう。
だが自動ドアも電力を消費する。電力を使わない自動ドアがあれば、社会の脱炭素化に少しは貢献できるはずだ。非電動の自動ドアが数百万台と普及すれば、その貢献は無視できないインパクトを持つ。
ケンタッキーフライドチキンの1号店を62歳で開店したカーネル・サンダースのように、川那辺博康社長は今から14年前、60代になってから起業した。万有引力の法則を発見したアイザック・ニュートンから付けたNewtonプラス(東京都)という社名が示唆するように、人の体重、つまり引力を動力源に開閉する自動ドアを製造している。
【詳しく読む】電力ではなく「引力で開閉する自動ドア」...Newtonプラスが挑む「持続可能な入り口」とは
電力を全く使わないため、二酸化炭素(CO₂)を排出せず、停電時に止まる心配がない。センサーを使わないため、人が挟まれる万が一の事故も起きない。まさにサステナブルで、レジリエント(強靭)な自動ドアだ。
環境負荷軽減への熱い情熱
「世の中にマッチする製品だと胸を弾ませて販売したが、最初の7~8年は全く売れなかった。壁の1つは価格競争力。特徴を理解してもらえても採用には至らなかった」と、今年度のニューズウィーク日本版「SDGs(持続可能な開発目標)アワード」授賞式での受賞スピーチで、川那辺社長は感慨深く語った。
「支援してくれる方たちと、環境負荷低減に貢献するんだという熱い情熱を持つ従業員たちのおかげで、ここまでやってこられた」

災害時の停電に対する危機感が広がるにつれ販売台数が増え、価格も現在は電動自動ドアと「同程度」に下げられたという。
とはいえまだ、数百万台の電動自動ドアが同社の荷重式自動ドアに代替されるような未来は訪れていない。普及のティッピングポイント(後戻りできない臨界点)はまだ訪れていない。
こうした製品やSDGs達成のための施策は日本各地にある。それらがたとえ先進的でも、社会全体に広がらなければ効果は限られる。
世界を持続可能にするには、画期的な製品や研究、変革を後押しする制度や政策が不可欠だが、それだけでは不十分だ。たとえ小さくとも幅広い分野での努力が重要であり、メディアはもっと、それらを普及させる手助けができるはず──。そうした問題意識から、本誌は2023年春に「SDGsアワード」プロジェクトを立ち上げた。

25年春に始動した3年目のプロジェクトには、建設会社からアプリ開発会社、食品メーカー、製薬会社、専門学校まで、企業規模もSDGsに取り組む体制もさまざまな56社(上のグラフ)が参画。
それらの計64の取り組み事例を本誌ウェブサイトで発信し、メディアとして「光を当てる」努力を今年度も重ねてきた。
※今年度の受賞企業の紹介はこちら:輝きを放つ 受賞企業7社のサステナブルな挑戦【第3回SDGsアワード】






