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集塵機のフィルターを、「ネコギギ」布製コースターにアップサイクルした深い理由

2025年11月21日(金)16時50分
瀬戸義章(作家・ライター)

まずは素材となる廃材を選ぶため、新東工業の基幹工場がある豊川市を訪れた。700人ほどの社員が働く広大な敷地だ。しかし、想定外の壁にぶつかることになる。豊川製作所ではリサイクルを徹底しているため、「廃材はない」と言われてしまったのだ。

新東工業は古くから環境問題に取り組んできた。経済が優先され、公害が蔓延した時代であった1963年に、「花にも優しいモノづくり」という企業広告を展開するなど、汚染物質の低減や資源循環を推進してきたのだ。

長年の積み重ねが実を結んでいたわけだが、このままでは企画が頓挫しかねない。探し回った末に候補として挙がったのは、鋳造に使う「研磨材の砂」と、空気を清浄する「集塵機フィルターの端切れ」だった。

当初は砂を使ったスマホスタンドやペーパーウェイトが検討されたが、破損が懸念され、フィルター生地を使ったコースターを製作する方針が決まった。

本質をとらえたデザイン

次は、生物の選定だ。研究者の渡辺滋子氏によるガイドのもと、新東工業の社員とともに、工場の裏手に広がる赤塚山で自然観察会が開催された。山を歩きながら、足元にある自然の豊かさと、生きものたちの存在を肌で実感していく。

豊川市は、全国トップクラスの清浄さを誇る一級河川「豊川(とよがわ)」によって育まれた土地である。新東工業が排水基準に細心の注意を払っていることも踏まえて「水」をテーマに定め、豊川の自然を象徴する5種類の生きものを選んだ。

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