最新記事
SDGsパートナー

太陽光発電でつくる「ヒト」と「カネ」の新たな循環...生活クラブが庄内地域で描く「ローカルSDGs」の未来とは?

2025年11月13日(木)11時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

チビちゃん丸もちの製造風景

「チビちゃん丸もち」の製造風景

生活クラブでも庄内地域で製造された丸もちを扱っていたが、生産者の高齢化や人手不足、工場の老朽化から製造が困難に。そんななか新工場を立ち上げた背景には、伝統の継承に加え、地元のもち米産業を維持し、6次産業を盛り上げたいという思いがあったという。

工場は遊佐町で廃校になった小学校の旧校舎を活用して建設。製造のための機械の一部は元生産者から譲渡され、技術面でも指導を受けながら文化の継承に取り組んでいる。また、この工場にも千葉県から移住した生活クラブ組合員が携わり、もち製造を支えている。

このほかにも、古着や繊維類の資源化を行いながら刺し子文化を守る「酒田でファーバーリサイクルをすすめる会」や、庄内産の米を原料とした「おこし」を製造する「日本海企画合同会社」、酒田市による「買い物弱者対策検討事業」などが助成を受けている。

さらに、生活クラブでは2023年6月、酒田市に移住交流施設「TOCHiTO(とちと)」をオープン。

3階建ての集合住宅「居住棟」、シェアオフィスやイベントスペースを備えた「交流棟」、そして家庭菜園に使える中庭からなる複合施設は、移住者と地元住民の交流の拠点になっており、移住者が地域づくりの新たな担い手になることを目指している。

居住棟は既に満室で、新たな施設のためのリノベーションも進められている。

地域資源の循環・活性化のプロジェクトを全国へ

庄内遊佐太陽光発電所

「庄内遊佐太陽光発電所」奥に写る鳥海山からの伏流水がすぐ近くの月光川を流れ遊佐町の田んぼに流れているため、発電所では除草剤を一切使わない


庄内における活動の根底にあるのは地域経済の衰退に対する危機感だ。

高齢化と過疎化が進む日本。もはや、農家と消費者の二者間提携だけでは、産地を持続可能にしていくことが難しい。そこに住む人々や自治体とともに、新たな繋がりを構築し、資源を循環させ、地域を活性化させていくことがこのプロジェクトの目的だ。

庄内地域のプロジェクトは、地域内外の連携による過疎化地域の課題解決例として「第10回環境省グッドライフアワード 優秀賞」を受賞するなど、高い評価を受けている。

「元気なうちに移住し、街づくりに参加し、働き、社会に貢献する」という新しい暮らしのモデルケースとして、生活クラブは今後、⾧野・栃木・紀伊半島の産地でも同様のプロジェクトを展開する計画だ。

生活クラブの取り組みでは、食料生産地で「エネルギー」をつくり、そこに組合員が移住することで「ヒト」が動き、エネルギー生産を通して生まれた「カネ」が、また新たな「ヒト」を呼び込み、新たな地域事業を担う、という好循環が生まれている。これを支えるのは、生活クラブ生協の約42万人の購買力だ。

「移住する」「寄付する」の一歩先を行く、「ローカルSDGs」が他の事業体にまで広がっていけば、それは日本の未来も変え得る大きな力になるかもしれない。

◇ ◇ ◇


アンケート

どの企業も試行錯誤しながら、SDGsの取り組みをより良いものに発展させようとしています。今回の記事で取り上げた事例について、感想などありましたら下記よりお寄せください。

アンケートはこちら

ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ベネズエラ国債、大規模債務再編なら大幅値上がりか=

ワールド

韓国外相、ルビオ氏に米韓首脳合意文書の公開要請=聯

ワールド

トランプ氏、つなぎ予算案に署名 政府機関閉鎖が解除

ビジネス

午前の日経平均は小幅続伸、景気敏感株に買い TOP
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中