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障害者や高齢者の力で「未利用魚」を「魅了魚」に...新潟アパタイトとWith Youが目指す「水福連携」

2025年10月20日(月)16時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

福祉の力で「未利用魚」を「魅了魚」に

「地球規模の問題を地域の福祉で解決する。そんな挑戦が現実になりつつあります」と語るのは、プロジェクトを主導する小林俊介氏だ。

「エソカラエシカル」は2024年4月に情報収集から始まり、7月には試作段階へと移行。11月には保健所から水産加工業の許可を得て、正式に事業をスタートさせた。

商品完成前から上場企業と契約を結ぶなど、市場からの注目度も高い。2024年末には全国放送のテレビ番組で日本一に選ばれたラーメン店や多店舗展開の飲食チェーン、老舗料亭などからの引き合いも相次いだ。

事業化から1年に満たないスピードで市場浸透が進んでいる背景には、長年にわたる雇用ノウハウと、SDGsを企業文化として捉える同社の姿勢がある。

また、未経験の食品加工や水産分野で成果を上げている点も特筆に値する。

加工に必要なのは高価な設備や特殊技能ではなく、主婦が培った「台所スキル」と、これまで活躍の場が限られてきた人材だ。これにより、再現性の高いビジネスモデルが確立されており、他地域や海外への展開も現実味を帯びてきている。

現在はB to Bを中心に「エソの焼干し」の販路拡大と、焼干しにならない大きな個体を用いた「エソの落とし身」の販売先開拓を進めている。2025年度以降は、生産工場の拡大とB to C向け商品の開発に着手予定だ。仕入れから加工、販売までの「入口・加工・出口」を一貫して見直し、2030年にはエソが「未利用魚」ではなく「魅了魚」として市場で認知されることを目指す。

エソの焼干し

エソの焼干し。我々の食卓に並ぶ日も遠くないのかも。


さらに、将来的にはこの取り組みを国策として位置づけ、日本が持つ海洋国家としてのポテンシャルと、福祉分野での課題解決力を融合させた新しい国際モデルに育てたいという思いもある。

「いずれは国連の場で『水福連携』という考え方を発信できれば」と小林氏は語る。この言葉の背景には、ただのビジネスではなく、社会の仕組みそのものを変えていこうとする強い意志がある。

新潟アパタイトとWith Youの挑戦は、資源、福祉、雇用、地域活性のすべてを巻き込みながら、新たな社会モデルを創出する試金石となる。そこには、課題を課題のままで終わらせず、未来を切り拓こうとする企業の姿が確かに存在している。

「未利用」の水産資源を、活躍の場が限られてきた人々の手で、消費者を「魅了」するために利用する。これこそがSDGsの真髄なのかもしれない。

◇ ◇ ◇

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どの企業も試行錯誤しながら、SDGsの取り組みをより良いものに発展させようとしています。今回の記事で取り上げた事例について、感想などありましたら下記よりお寄せください。

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