最新記事
SDGs

「社会貢献とビジネスの両立は可能か?」アフリカ発ブランド「Uzuri」山岸 成さんが考える「SDGsと事業」

2025年2月19日(水)11時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

──主なお客様層はどのような方々でしょうか?

SDGsに関心のある方々が多い印象ですが、僕たちが最終的に目指しているのは、デザイン性や機能性、アーティスティックな魅力を感じて購入していただくお客様です。最終的に、アップサイクル製品でありアフリカ産であることが付加価値となる形が理想です。そういったお客様を増やしていきたいと思っています。

──現在取り組まれているアップサイクル事業にたどり着くまでに、他のアイデアもあったのでしょうか? なぜ今の商品を選んで展開しているのか、教えてください。

アップサイクルに特別な思い入れがあったわけではありません。ただ、アフリカの現地企業にはアップサイクルに積極的に取り組むところが多く、そうした姿勢もアフリカの大きな魅力の一つだと感じました。そこで、連携を進めていく中で、そうした取り組みの良さをもっと広く伝えていきたいと思うようになりました。例えば、現在展開しているiPhoneケースも、アップサイクルに注力する現地企業とコラボレーションして作成したものです。

newsweekjp20250217123413-f15006efad2d9a91e1be80e71bc2293808230473.jpg

廃棄されるはずのビーチサンダルが、アップサイクルでよみがえる

newsweekjp20250217123110-704a9e2bb9221cc2e04407634ac471d4ee26ee40.jpg

ビーチサンダルがiPhoneケースに生まれ変わる

──現在までの取り組みで、現地の社会や地域にどのような影響を与えたと感じていますか?

現地の工場に発注を行い、雇用創出には一定の貢献ができていると思います。ただ、まだ規模が小さく、このままでは単なる自己満足で終わってしまいます。そのため、現在は規模の拡大に向けた準備を進めています。準備だけで終わることなく、実行に移して成果を出していきたいと思っています。

──大学での研究についてもお聞きしたいのですが、以前の発表で、エシカルな側面を強調して売るべきか、それとも別の方法が良いのか、という研究をされていたと思います。どのような意図でその研究を進めているのか教えてください。

商品を販売する中で、雇用創出や環境配慮といったサステナビリティの取り組みが、本当に購買意欲に結びついているのか疑問を持ちました。同業他社にヒアリングを行うと、エシカルな側面を押し出さない方が売れるという意見もあれば、強調した方が購買につながるという意見もあり、実務では見解が分かれている状況です。そのため、学術的なアプローチでこれを検証することが有効だと考え、現在はリサーチクエスチョンを立てて研究を進めています。

newsweekjp20250217122844-532d594c9abce6a18b07092d8fcbd15fdf9b7cbb.jpg

大学の研究で実際に使用する広告の一例

──現在の研究ではどのような結果が出ていますか?

今後広告を出してデータを収集する予定であるため、現時点ではまだ具体的なデータはありません。しかし、先行研究を調べたところ、社会貢献性が購買行動を促すとする研究が数多く報告されている一方で、顧客の反発や品質イメージの低下を招く可能性があると指摘する研究も多く見られます。「社会貢献性」といっても、エコフレンドリーやフェアトレードなど、さまざまな形態が存在しますが、これらサステナビリティ要素(エコフレンドリーやフェアトレードなど)を同一商品内で比較検討した研究は、限定的でした。

私たちの商品は、途上国で生産され、さらにアップサイクルを取り入れているという2つの側面を持っています。そのため、環境配慮を強調した場合と、雇用創出を強調した場合でどのような違いが出るのかを検証する意義は大きいと思います。同一条件で比較できる形にすることで、より有意義な研究結果を得られると考えています。ちょうど今、実験用の広告素材が完成したところです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

金正恩氏が列車で北京へ出発、3日に式典出席 韓国メ

ワールド

欧州委員長搭乗機でGPS使えず、ロシアの電波妨害か

ワールド

ガザ市で一段と戦車進める、イスラエル軍 空爆や砲撃

ワールド

ウクライナ元国会議長殺害、ロシアが関与と警察長官 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあるがなくさないでほしい
  • 3
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世界的ヒット その背景にあるものは?
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 6
    BAT新型加熱式たばこ「glo Hilo」シリーズ全国展開へ…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    就寝中に体の上を這い回る「危険生物」に気付いた女…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    シャーロット王女とルイ王子の「きょうだい愛」の瞬…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 8
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中