最新記事
ファスティング

「断食」が細胞を救う...ファスティングの最大効果とは何か?

2025年12月31日(水)11時20分
デイヴ・アスプリー (起業家、投資家、「ブレットプルーフ」創設者)

たとえば、日本人生物学者のグループの2019年の発表では、58時間の断食──マウスでなく、人間の!──は、脂肪を分解しタンパク質構造を制御する化学経路に関与する44種の化合物の血中濃度を高めた(*4)という。

断続的ファスティングは、強力な抗老化分子、ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD)に影響を及ぼすことが証明されている。活性型NADはNAD+と呼ばれ、体内の化学反応がスムーズに進むように電子を伝達するという、一見単純に思える役割をもつ。


だが、この小さな分子はじつによく働く。NAD+のおかげで細胞はエネルギーを生成できるほか、NAD+はDNAのダメージ修復を助け、知的機能の低下を防ぐ鍵となる正常なタンパク質形成を促し、老化を進行させる大きな要因のひとつである容赦ない酸化ストレスから細胞を守る。

断続的ファスティングには、NAD+の血中濃度を高める効果がある。やったほうがいい。冗談抜きで。

【参考文献】
(*1)Adrienne R. Barnosky et al., "Intermittent Fasting vs Daily Calorie Restriction for Type 2 Diabetes Prevention: A Review of Human Findings," Translational Research 164, no. 4 (October 2014): 302-11,
(*2)Danielle Glick, Sandra Barth, and Kay F. Macleod, "Autophagy: Cellular and Molecular Mechanisms," Journal of Pathology 221, no. 2( May 2010): 3-12.
(*3)Mehrdad Alirezaei et al., "Short-Term Fasting Induces Profound Neuronal Autophagy," Autophagy 6, no. 6(August 2010): 702-10.
(*4)Takayuki Teruya et al., "Diverse metabolic reactions activated during 58-hr fasting are revealed by nontargeted metabolomic analysis of human blood," Scientific Reports 9, no. 854 (2019).


デイヴ・アスプリー(Dave Asprey)
起業家、投資家、シリコンバレー保健研究所会長。「ブレットプルーフ」創設者。カリフォルニア大学サンタバーバラ校卒業。ウォートン・スクールでMBAを取得。シリコンバレーのIT業界で成功するも肥満と体調不良に。その体験から医学、生化学、栄養学の専門家と連携して膨大な数の研究を統合し、100万ドルを投じて心身の能力を向上させる方法を研究。バターコーヒー(ブレットプルーフ・コーヒー)を考案し、ダイエットに成功した体験を『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』(ダイヤモンド社)にまとめ、世界的ベストセラーとなる。ニューヨーク・タイムズ、フォーブス、CNNなど数多くのメディアで活躍中。著書に『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』『シリコンバレー式超ライフハック』(ともにダイヤモンド社)など多数。


newsweekjp20250207062936-b38dc049130a5743b0eaf36672c485bfb49b0c29.png

シリコンバレー式 心と体が整う最強のファスティング
 デイヴ・アスプリー[著]/安藤 貴子[訳)]
 CEメディアハウス[刊]

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)


【関連記事】
「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的ファスティング」とは?
なぜ「ファスティング」は「筋トレ」と同じなのか? ...間食をやめるだけで、あなたはすでに成功している

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国、26年投資計画発表 420億ドル規模の「二大

ワールド

ロシアの対欧州ガス輸出、パイプライン経由は今年44

ビジネス

スウェーデン中銀、26年中は政策金利を1.75%に

ビジネス

中国、来年はより積極的なマクロ政策推進へ 習主席が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 7
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中