砂糖はなぜ「コカイン」なのか?...エネルギー効率と回復力を「分子レベル」で高める「代謝リセット」のススメ
本書『シリコンバレー式 心と体が整う最強のファスティング』は適切なファスティングの方法を選ぶのに手を貸すためにあるのであって、害を及ぼすほど極端なやり方をすすめているわけではない。それに、何かが「できる」イコールそれを「すべき」という意味ではない。
それは人生全般、とりわけファスティングに言えることだ。目標は苦しい思いをすることでも自分を無理やりに極限まで追い込むことでもない。目指すのは、自分を成長させ、エネルギー全開で自信に満ちた、あらゆる点で強い人間になることなのだ。
代謝の力を強くするのに重要なのは、代謝の柔軟性、つまり糖燃焼から脂肪燃焼に難なくスムーズに切り替えられる細胞の力である。
そうした細胞のミトコンドリアはすでに、糖か脂肪のいずれかから主要なエネルギー貯蔵分子のアデノシン三リン酸(ATP)を産生するための化学的ツールをすべて備えているのだが、ほとんどの時間はそのうちのひとつしか起動されない。
僕らの大半は、炭水化物を分解して得られる多量の糖を含む、糖燃焼ツールを常に使っている。細胞が糖燃焼モードから抜け出せないと、体重を減らすのが難しくなり、利用可能なエネルギー量が制限される。
運動とファスティングは細胞にとって予測不能な状況を作り出す。そのとき細胞は、糖は一時的にしか入手できないため、ないときは脂肪をエネルギー源にする準備をしておく必要があるという生化学信号を受け取る。いかなることに対しても、細胞はぬかりない準備をしておかなければならない。
そのために、細胞は組成と構造を調整し、どちらのタイプの代謝ツールも起動できるようにする。体重減少およびエネルギー生成を助けるのに加えて、柔軟な細胞はインスリン抵抗性を発症させず、ケトーシス状態にやすやすと順応する。気分が悪くなることもない。