【先進医療】遺伝子解析の進歩が変えた「がん治療の新常識」...驚異のパラダイムシフトに迫る

THE AGE OF GENETIC SEQUENCING

2025年1月30日(木)19時41分
アレクシス・カイザー(ヘルスケア担当)

newsweekjp20250130051204-da8f62d3bf0a3bdde499b990daf4bb86a61ad55c.jpg

バーガー(写真)はソリットとともにMSKの分子腫瘍学センターの共同所長を務め、協力して研究を進めている RENAE WHISSEL

アドベントヘルスの中央フロリダ支部でゲノム・個別化医療の責任者を務めるウェズリー・ウォーカーによれば、WGSの有効性を特に期待できるのが白血病や肉腫、中枢神経系の癌、そして小児癌の分野だ。

MSKの小児科長アンドルー・コングも、子供の癌治療におけるWGSの可能性に期待を寄せる。例えば肺癌の変異を調べる一般的な検査は、子供にはほとんど役に立たないが、WGSなら深く掘り下げて調べることができる。

MSKではWGSは子供の癌患者に対する標準的な検査となっており、これまでに1000人近い小児癌患者のWGSを行ったという。

希少癌にかかったあるティーンエージャーの患者は、標準的な検査では「対処すべきものは何も」なかったのに、WGSでは「変異がたくさん」見つかったと、コングは言う。


その結果、選ばれたのが免疫チェックポイント阻害薬だ。3回の投与で患者の腫瘍は小さくなり始め、ついには姿を消した。再発も起きていない。「WGSのおかげで、他の技術では見つけられなかった効果的な治療法にたどり着くことができた」と、コングは語る。

セント・ジュード小児研究病院で血液病理学・分子病理学長を務めるジェフリー・クルコによれば、同病院では年に400~500人の患者を対象にWGSを行っている。

同病院は解析費用を病院側が負担しているアメリカで唯一の医療機関だ(フォーブス誌によれば、病院の経営は年間で25億7000万ドルに上る個人からの寄付で支えられている)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日本との関税協議「率直かつ建設的」、米財務省が声明

ワールド

アングル:留学生に広がる不安、ビザ取り消しに直面す

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、堅調な雇用統計受け下げ幅縮
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単に作れる...カギを握る「2時間」の使い方
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 6
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 7
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 10
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中