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「酒は百薬の長」は間違いだった 最新研究で判明「酒と健康は共存できない」

2023年3月13日(月)11時45分
生田 哲(科学ジャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

2018年、これらの主張を真っ向から否定する研究結果が『ランセット』という一流医学雑誌に発表された(*2)。結論は、あまりにも明らかで、健康によいアルコール摂取量というものは存在しない、すなわち、アルコールは摂取量にかかわらず有害である、というもの(図表1)。

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飲酒による健康リスク(出所=『「健康神話」を科学的に検証する』p.95)

飲酒に健康効果があるとの主張を完全に否定し、飲酒は有害であると主張するものである。しかも、この論文の信頼性は極めて高い。その理由を次に述べる。この論文は、ワシントン大学医学部のエマニュエラ・ガキドウ教授のグループが中心になり、アルコールの世界への影響を調査した結果をまとめたものである。

(*2)GBD 2016 Alcohol Collaborators, Alcohol use and burden for 195 countries and territories, 1990-2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016. Lancet, 2018 Sep 22; 392(10152) P1015-1035, September 22, 2018. PMID: 30146330

飲酒にもメリットはあるがデメリットのほうが大きい

この調査では、1990~2016年に発表された、195カ国からのデータが掲載された約600の治験論文を集めて分析を行った。このように複数の治験データを集めて分析することを「メタ分析」と呼んでいる。メタ分析の信頼性は高いため、発表された論文の信頼性も高く、評価の高い学術雑誌に掲載されることが多い。

この論文が掲載された『ランセット』は超一流医学雑誌である。この論文のポイントは、こうだ。適度な飲酒は心臓をごくわずかに保護するかもしれないが、この利益を相殺する、がんやその他の病気を引き起こすリスクを格段に高めることを発見したので、アルコールは摂取量に関係なく有害であること、加えて、政府機関に対しアルコール飲料の消費に関するガイドラインを改訂するように提案している。

この結論は、飲酒を適度に楽しんでいると考える人々(中程度の飲酒者)にとって驚きであり、彼らを落胆させるものである。

先に述べた通り、公衆衛生の専門家たちは長年にわたり、「適度な飲酒は害にならない、あるいは有益かもしれない」と主張してきたからである。この論文は、2016年に全世界の男性39%、女性25%が日常的に飲酒していたこと、アルコールが280万人に死をもたらしたこと、アルコールは早死の第7番目の原因であり、全男性の死の6.8%、全女性の死の2.2%はアルコールによるものであることを明らかにした。

1日2杯で7%、5杯で37%も健康リスクが高まる

「「健康神話」を科学的に検証する」加えて、飲酒量が増えるにしたがい、健康リスクは直線的に増加することから、飲酒量と健康リスクには因果関係が成り立つ。すなわち、飲酒が健康を損ねる原因となっている。では、飲酒はどれほど健康を損ねるのか?

ノンドリンカー(まったく飲まない人)にくらべ、1日1杯飲む人はがんや糖尿病などアルコールに関連する23もの健康問題のリスクが0.5%高くなる。わずか0.5%。このレベルの飲酒量であればリスクの上昇は非常に小さい。この研究によれば、10万人当たり増加する死者はわずか4人である。たいしたことはない。

しかし、1日2杯飲む人はノンドリンカーにくらべ、健康リスクが7%も上昇する。そして1日5杯飲むと健康リスクは37%も上昇する。こうなるとたいしたことがある。これまでの研究で明らかになったことは、次の通りである。


(a)アルコールは健康にはマイナスである。だから、飲まないのがベスト。
(b)あなたが、今、飲酒していないなら、よりよい健康を求めて飲み始める必要はない。
(c)あなたがすでに飲酒しているなら、適量を超えて飲むべきではない。

健康を考えるなら、アルコールを飲まないのがベストであるが、付き合いもあることだし、まったく飲まないのは辛いというのであれば、適量を飲むようにしたい。適量というのは1日1杯である。

生田 哲(いくた・さとし)

科学ジャーナリスト
1955年、北海道に生まれる。薬学博士。がん、糖尿病、遺伝子研究で有名なシティ・オブ・ホープ研究所、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)などの博士研究員、1986年から91年までイリノイ工科大学助教授を務める。遺伝子の構造やドラッグデザインをテーマに研究生活を送る。現在は日本で、生化学、医学、薬学、教育を中心とする執筆活動や講演活動、脳と栄養に関する研究とコンサルティング活動を行う。著書に、『遺伝子のスイッチ』(東洋経済新報社)、『心と体を健康にする腸内細菌と脳の真実』(育鵬社)、『ビタミンCの大量摂取がカゼを防ぎ、がんに効く』(講談社)、『よみがえる脳』(SBクリエイティブ)、『子どもの脳は食べ物で変わる』(PHP研究所)、『「健康神話」を科学的に検証する』(草思社)など多数。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
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