月5万円の年金生活で「若がえった」71歳 「今が一番幸せ」を実現した5つの秘訣

2022年10月16日(日)13時11分
紫苑(フリーランサー) *東洋経済オンラインからの転載

⑤ 将来=死への不安もなくなった

プチプラ生活を始める前は「死への不安や怖れ」がとても大きかったのを覚えています。「死ぬ瞬間」「人は死んだらどうなるのか」といった本を読むことが多かったものです。1つの不安材料は、きちんと見つめない限りほかの不安をも呼ぶのかもしれません。いわゆる「漠然とした不安」がいつもつきまとっていたように思います。

中古の一軒家を購入するまでは賃貸でしたから、毎月家賃が出ていきました。それにまだ生命保険にも入っていたので(のちに解約)、そのお金も月に2万円も払い続けていました。家を購入していなかったので貯金はあったのですが、それは徐々に減っていきます。貯金はあっても減っていくのは心細いものです。

「孤独死は嫌」死にも見栄を張っていた

そんな「不安」をごまかすためか、着物をはじめ、いろんなものをよく買っていました。不安でストレスが起きる→モノや食べ物でごまかそうとする→お金が出ていく、食べ過ぎなどで体調を崩す→ますます不安になる、というまさに悪循環の日々です。

家族ともあまりうまくいかない、不安は募る......。不安まみれの生活のなかで「どんなふうに死ぬんだろう」とよく考えたものです。「どうせ死ぬんだから」と「どんなふうに死ぬんだろう」の間で揺れ動いていました。現実の不安をちゃんと見るのが嫌で、そんな生活を続けていくことの怖さが飛躍して死へと繋がっていったのかもしれません。

無意識のうちにストレスになっていたのか、当時は週に3日もジムに通っていたにもかかわらず、体調が崩れることがよくありました。

死への不安が今はまったくないというとウソになります。でもプチプラ生活で体調がよくなり、これでやっていくとの覚悟ができたせいか、見栄を張るどころではないと気づいたせいか、ふっと肩の力が抜けて楽になりました。

死への不安のなかには、なぜか「見栄」もあったのですね。どんな見栄かというと「孤独死」だったり、「お墓」だったり、「みじめ」に死にたくないといったことでしょうか。死においても見栄を張る、とはどんだけ小物なんだと情けなくなりますが。

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絞り入り生地に燕帯。少し汚れがあったため格安で購入(写真:林ひろし)

70歳を前にして人並みに「終活」なるものを始めました。せめて死んだあとには、家のなかにモノをあまりの残さず、自分が倒れた時に誰かが家に入ってきても、あまり汚い場所は見せたくないなど、「外」や「子どもたち」に向けての気持ちが大きかったものです。その一環として始めたプチプラ生活は、いつのまにか「生活」、つまり生きるための活動になっていました。

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