最新記事

日本社会

高度成長期を支えたマンモス団地「松原団地」60年の歩み 建て替え進み多世代共生の新しい街へ

2022年8月28日(日)11時00分
鳴海 侑(まち探訪家) *東洋経済オンラインからの転載

松原団地記念公園から眺める獨協大学の建物

手前が松原団地記念公園。遊水池の機能も兼ねる。奥に見える獨協大学の建物との間には伝右川が流れる(筆者撮影)

多世代が住むことを意識した設計

住棟は最も高いもので11階建てだが、圧迫感は少ない。松原団地時代のように一律で同じ向きというわけではなく、あえて向きをずらした住棟もあり、単調な空間になることを防いでいる。住棟の間には駐車場や広場、遊具のほか、市民農園的なスペースがあり、多世代が住むことを意識した設計ともなっている。

「緑のプロムナード」を抜けると、旧C地区に整備された「松原団地記念公園」が広がる。広々とした原っぱがメインで、遊水池の機能を兼ねている。公園の隣には東武鉄道が主体となった商業施設や獨協大学の大学関連施設の建設が予定され、公園の北には完成したばかりのマンションが建っていた。

旧C地区の北側や旧D地区といった獨協大学前<草加松原>駅から離れたエリアはまだ空き地だ。特に旧D地区は、最後まで住棟が残っていたエリアで、2019年に住棟の取り壊しが終了したばかりだ。

今後は更地エリアの一番西側、草加バイパスに面したエリアに商業施設を建て、ほかの更地は主に一戸建ての建設が今後進められていく計画になっている。

松原団地の入居開始から60年間。現状もあわせてざっくりと見ていくと、入居開始当初は「憧れ」であった団地もさまざまな課題やイメージの変化の波に対応してきたことがうかがえる。

建設当初はホワイトカラーメインだった団地も、今後は多世代共生をテーマにまちがさらに変化していく。そのうち、周辺のまちの変化もなじみ、また新たな課題の発生や解決を繰り返しながら、新しいまちの姿になっていくのだろう。そのときの旧松原団地エリアは、再び住宅都市のモデルとなるようなまちになっていることを期待してやまない。



鳴海 侑(なるみ・ゆう)


まち探訪家
1990年、神奈川県生まれ。大学卒業後は交通事業者やコンサルタントの勤務等を経て現職。「特徴のないまちはない」をモットーに、全国各地の「まち」を巡る。これまで全国650以上の市町村を訪問済み。「まち」をキーワードに、ライティングをはじめとしたさまざまな活動を行っている。最新の活動についてはホームページ(https://www.naru.me/)やツイッター(https://twitter.com/mistp0uffer)で配信中。


※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
toyokeizai_logo200.jpg




今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 8
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中