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高松の「実家じまい」に25年、1800万円かかった松本明子さんが語る教訓

2022年6月30日(木)11時00分
内埜 さくら(フリーインタビュアー、ライター) *東洋経済オンラインからの転載

松本明子さん(撮影:梅谷秀司)

松本明子さん(撮影:梅谷秀司)

しかも番組の収録で査定していただいたところ、「買取価格は築年数が古いので上物の価値はゼロ。土地の価値だけで200万円。更地にすれば買い手はつきやすいですが、費用は500万円ほどかかります」と言われたのです。

ほかにも実家の管理や帰省費用がかかっているのに、更地後、売却してリフォーム代を引くだけでもマイナス300万円と。まさに、「なんじゃそりゃ!」状態でした(笑)。

――そのほかに月々の光熱費や、毎年の固定資産税などの固定費も25年分積み重なって、累計で1800万円超。それだけの費用をかけても、高松のご実家に移住したいとは思わなかったんですか。

私は1983年に『♂×♀×Kiss(オス・メス・キッス)』でアイドルデビューさせていただいたものの、鳴かず飛ばずでした。ありがたいことに、『TVチャンピオン』(テレビ東京)、『電波少年』『DAISUKI!』(ともに日本テレビ)で、やっと忙しくお仕事をさせていただけるようになったのは、20代半ばのことでした。そろそろ親孝行がしたいと思い、両親を高松から呼び寄せて、賃貸マンションで一緒に暮らし始めたのが27歳です。

松本さんが語る「教訓」

『実家じまい終わらせました! ~大赤字を出した私が専門家とたどり着いた家とお墓のしまい方』(祥伝社)そこからお仕事がさらに増えて、「この仕事になんとか"永久就職"できるのでは」と思い始めたのが、40代前半です。「もし仕事が万が一少なくなっても、高松に移住することはない。永住するのは東京だ」と、やっと腹をくくれたんです。

結果的に、両親を呼び寄せた27歳から実家を処分するまでの51歳まで足掛け25年、ほぼ空き家となった実家を管理し続けることになったんです。

――松本さんの経験から、伝えたい教訓は?

経験していえるのは、親が元気なうちにやはり実家の話をしておいたほうがいい、ということでしょうか。誰でも「亡くなったあと、実家を処分してもいい?」などとは切り出しにくいと思います。親の死が前提の話は子どもとしてしたくないですし、「お金に換えたいから、そろそろ死んでほしいのか」と、子どもの思いとは異なるニュアンスで親に受け取られる可能性もありますから......。

だからといって話をせずにいると、私のようなことになります(笑)。「松本明子さんのように、あとで子どもが大変な目にあうらしいよ。累計で1800万円だってよ」と、私の体験談をうまいこと使ってみてください。子どもに迷惑をかけたくないと思っている親は多いので、「それは大変だ」と、感覚を切り替えてもらえるかもしれません。

内埜 さくら(うちの さくら)

フリーインタビュアー、ライター
2004年からフリーライターとして活動開始。これまでのインタビュー人数は3800人以上(対象年齢は12歳から80歳)。俳優、ミュージシャン、芸人など第一線で活躍する著名人やビジネス、医療、経済や一般人まで幅広く取材・執筆。女性の生き方や恋愛コラムも手がける。


※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
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