最新記事
日本社会

ミスを認めないと、どうなるか...統合失調症を発症した姉と「間違えた」両親の20年が示す現実

2026年4月13日(月)16時35分
印南敦史 (作家、書評家)

なぜ間違えたか? 答えは、間違えない人はいないから

当時はオウム以外にもさまざまな宗教組織の人が、勧誘を目的として家に訪れていたそうだ。しかも姉が応対すると、家に入れてしまう。そんなことが続くなか、著者の抱える不安はどんどん大きくなっていった。

結果的にはそれが「今のうちに姉の記録を残さなくては」という思いにつながり、著者は行動に移すことになったのである。驚くほど長い年月がかかってしまったとはいうものの、結果的にはそれが『どうすればよかったか?』というドキュメンタリー作品に結実した。

本書の最終章で、著者は非常に説得力のある主張をしている。姉が統合失調症であることを決して認めようとしなかった両親についてだ。


両親は姉に統合失調症の急性症状が表れた時、判断を誤ってしまったと思います。両親は失敗だとは思っていなかったかもしれませんが。なぜ両親は判断を間違えたのか? その答えは、間違えない人はいないからです。(176ページより)

ミスを認めないと、ミスが存在しないことになり、さらにおかしなことが起きる。仕事あるいは家族間の諍(いさか)いなど、何についても当てはまることだろう。しかし著者が向き合わざるを得なかった「家族の問題」は、それらに比べて大きすぎる問題であったはずだ。

いずれにしても、人は間違えるのである。本書を通じ、それを改めて実感させられた。


『どうすればよかったか?』
どうすればよかったか?
 藤野知明・著
 文藝春秋

(※リンクをクリックするとアマゾンに飛びます)


■関連記事
「人間の本性」を見た裁判官が語った、自らの「毒親」の本性
20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精神病」だと気づいた「驚きのきっかけ」とは?
森達也:統合失調症の姉と、姉を自宅に閉じ込めた両親の20年を記録した『どうすればよかったか?』


[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。他に、ライフハッカー[日本版]、東洋経済オンライン、サライ.jpなどで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『この世界の中心は、中央線なのかもしれない。』( 辰巳出版)など著作多数。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英仏、ホルムズ海峡巡り今週会合開催 防衛的海上任務

ビジネス

基本原則は債務残高のGDP比引き下げ、債務の定義で

ワールド

イスラエルがガザ空爆、3人死亡 カイロでの協議中に

ビジネス

独VW、第1四半期世界販売4%減 中国・米国が不振
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相場で人気の優良株から売られる落とし穴
  • 2
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 3
    新しいアメリカンドリームは「国外移住」...5人に1人が海外を希望する時代
  • 4
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ…
  • 5
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 6
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    「いい加減にして...」ケンダル・ジェンナーの「目の…
  • 9
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 10
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 8
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中