ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカートニー」を再評価する傑作映画『マン・オン・ザ・ラン』
The Conversion of Paul
「70年代のポール」を再評価する
<ビートルズの解散後、波乱の中で成長を目指したポール・マッカートニーに迫る傑作『マン・オン・ザ・ラン』>
▼目次
焦点はウイングス時代
リンダへの不当な扱い
83歳になったポール・マッカートニーは、今や万人に愛される存在と言っても過言ではない。信じ難いかもしれないが、そんな人気者もかつては最も賛否の分かれるミュージシャンの1人だった。
歌手としてもソングライターとしても演奏者としても、マッカートニーは間違いなくロック史に輝く重要人物だ。だがかなり長い間、彼は多くの熱狂的ロックファンから激しいバッシングを受けていた。
1960年代後半には奇怪な死亡説が流れた。本物のマッカートニーは数年前に死んでおり、いま活動しているのは替え玉だというのだ。
70年には「ビートルズを解散させた張本人」と不当に非難された。マネジャーのアレン・クラインにビートルズ関連の権利が渡るのを防ぐため、やむなく元メンバー3人を法的に訴えたことで、バッシングはさらに過熱した。
初期のソロアルバムは評論家に酷評され、ビートルズ解散後にマッカートニーが結成したバンド、ウイングスは商業的に大成功を収めたものの、最後まで「ビートルズには及ばない」という批判が付いて回った。
モーガン・ネビル監督の『ポール・マッカートニー:マン・オン・ザ・ラン』は、バッシングがピークに達した70年代のマッカートニーの軌跡をたどる。波乱の日々を驚くほど思慮深く掘り下げた名ドキュメンタリーだ(アマゾン・プライムで配信中)。
本人と家族が制作に参加し、そのインタビュー音源が随所で使われている。ウイングスのメンバーでもあった亡き妻リンダのコメントもある。
映画はマッカートニーを聖人に祭り上げることも、美化することもしない。ただの美談にするより彼がずっと複雑で面白い存在であることを、本人も監督も理解しているからだ。ミュージシャンとして、人間として成長しようともがく姿を真っすぐに捉えた映像が、見る者の心をつかむ。





