「冗談だろう」の落選から――苦節30年以上、73歳デルロイ・リンドーがついにオスカー候補に
Surprising but Much-Deserved

だがリンドーの演技に込められたユーモアは安っぽさとは無縁である。むしろ長年、涙を必死にこらえてきた人間による磨き抜かれたコメディーだ。
苦痛と迫害に満ちた人生の副産物として、笑いと芸術を生み出す重層的な人物をリンドーほど見事に演じられる俳優はまれだ(しかもわずかな登場時間で)。

その典型例が、スリムの友人が白人至上主義団体KKK(クー・クラックス・クラン)に殺人と性暴行の罪を着せられ、リンチされた経緯を語るモノローグだ。
あふれ出る感情を音楽に昇華させるスリムの姿を映し出すこのシーンには胸を締め付けられる。
言うまでもなく、リンドーが賞に値する演技を披露した映画は今回が初めてではない。この俳優は30年以上にわたり、特にスパイク・リー作品で一級品の演技を続けてきた。
92年の傑作『マルコムX』(原題:Malcolm X)では、デンゼル・ワシントン演じる主人公も怯えるギャングのアーチー役。黒人少女の成長を描いた『クルックリン』(94年、原題:Crooklyn)では、売れないミュージシャンの父親ウッディを、そして『クロッカーズ』(95年、原題:Clockers)では地元の麻薬王ロドニー・リトルを演じた。





