構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガロポリス』は、ある1点で『スター・ウォーズ』を超える?
Into the Heart of Madness
高尚な哲学とチープさと
『メガロポリス』は明らかに、ハリウッドの無声映画時代の壮大さと、セシル・B・デミル(Cecil B. DeMille)監督の群集劇の影響を受けている。多くの名優がほんの数シーンだけ出演しており、その全てに気付くことはできそうにない。
現場もスムーズではなかったようだ。あるスタッフは英ガーディアン紙に、デジタルを使えば「10分で」完成する視覚効果を、コッポラがほぼ1日がかりで試行錯誤したと愚痴をこぼした。しかも、その直前に視覚効果チームの大半を解雇していたのだ。
業界誌は伝統的なハリウッド流からの逸脱を揶揄した。『ゴッドファーザー(The Godfather)』を作った男が一体どうしたのだろう。
コッポラは最後のスタジオ作品となった1997年の『レインメーカー(The Rainmaker)』以降、伝統的な物語の形式を手放した。その後の作品もそれぞれ長所はあるが、見ていて退屈でもあった。
しかし、『メガロポリス』は意図的に、時には偶然に笑いを誘う。また、時代の変化に合わせて脚本を修正したところもある。第3幕は9.11テロを思わせる始まりで、金持ちのダメ息子のクローディオが、ポピュリズムをあおる才能を発揮して政界で台頭する......もうお分かりだろう。
壮大なアイデアは、時には練り上げられたディティールとうまく連携していないようにも見える。だが、大衆にどう受け止められるかは心配無用。コッポラの狂気に見せかけた老獪さを過小評価してはいけない。