最新記事
音楽

「ガラパゴス音楽」とは呼ばせない ...日本人アーティストに全米が夢中──BAND-MAID/新しい学校のリーダーズ/YOASOBI/藤井風/XG

Band-Maid / Atarashii Gakko! / Yoasobi / Fujii Kaze / XG

2024年8月8日(木)15時43分
ロブ・シュワルツ(ライター、元ビルボード誌東京支局長)
「新しい学校のリーダーズ」ロンドン公演

新しい学校のリーダーズの4人は6月のロンドン公演でもキレキレのダンスを見せた CHIAKI NOZUーWIREIMAGE/GETTY IMAGES

<アメリカ市場への参入に本腰を入れてこなかった日本の音楽産業だが、配信サービスやTikTok、アニメ人気の流れに乗って躍進中。フェスにテレビ、ホワイトハウスに招かれるアーティストも>

日本の音楽産業は長いこと、アメリカに次いで世界第2位の規模を誇ってきた。しかし本国で大成功を収めた日本のミュージシャンがアメリカに進出しても、なかなか人気を獲得できずにいた。

韓国のKポップはアメリカで大成功を果たし、マンガやアニメをはじめとする日本のほかのエンターテインメントもアメリカ人の間で大人気。そうした背景を考えると、日本のミュージシャンは海外で成功するチャンスを逃してきたようにも思える。


そもそも、日本の音楽産業は今まで海外市場へのアプローチにあまり関心がなかった。アプローチしたとしても、アメリカのような大きな市場にインパクトを与えようと本腰を入れてはいなかった。

アメリカ進出を目指すミュージシャンをサポートするシンク・サミット社のマーク・フリーザーCEOは「日本の音楽は、圧倒的多数が国内で消費するために作られてきた」と指摘する。

「一部の例外を除いて輸出志向ではない。それに日本市場は非常に大きいから、もしアーティストが海外進出を決断すれば、国内の売り上げに直接的な影響が及ぶ可能性がある」

実際、日本人アーティストのマネジメント事務所は、日本を離れれば大きな利益が失われると考えて、海外進出に及び腰になる傾向があった。

だが、そんな状況に変化が訪れている。

ストリーミングが開く扉

日本市場は諸外国に比べると、CDをはじめとする音楽ソフトの占める割合が大きい。それでも、近年は音楽配信サービスの売り上げが拡大している。

日本レコード協会の調べによると、昨年は配信サービスが売り上げ全体の34.5%を占めた。その5年前の18年には約21%だったから、大幅な伸びだ。配信サービスが日本の音楽産業の大きな柱になったことは間違いない。

今年に入ってからも、この数字は伸び続けている。

エンターテインメント業界での信頼が高い米データ会社ルミネイトのヘレナ・コシンスキー副社長(グローバル担当)は「当社の統計によると、日本のオンデマンド音楽ストリーミングは今年第1四半期に10.3%増加。世界の伸び率を8ポイント近く上回っている」と言う。

数年前には、日本での音楽ストリーミングの増加率が世界を上回る日が来るとは誰も思わなかっただろう。

日本の音楽配信産業が成長するにつれて、日本のアーティストが海外で、特にアメリカで成功する機会も増えてきた。

アメリカで日本の音楽アーティストのプロモーションを行っているプロジェクト・アステリの加藤公隆CEOは「ストリーミングの普及によって、多くの日本人アーティストは自分たちのファンが世界中にいることを知り、世界中の音楽ファンが日本のアーティストを発見できるようになった」と語る。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、ロは「張り子の虎」に反発 欧州が挑発な

ワールド

プーチン氏「原発周辺への攻撃」を非難、ウクライナ原

ワールド

西側との対立、冷戦でなく「激しい」戦い ロシア外務

ワールド

スウェーデン首相、ウクライナ大統領と戦闘機供与巡り
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    琥珀に閉じ込められた「昆虫の化石」を大量発見...1…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中