最新記事

カルチャー

対談:柳井正×佐藤可士和、「UT」「+J」「ビックロ」......2人の対話が生み出してきたもの

2021年2月13日(土)12時15分
写真:河内 彩 文:高瀬由紀子 ※Pen Onlineより転載

柳井 店舗全体が公園になるというアイデアが秀逸だよね。家族連れが皆で楽しめる、まさに「ディスティネーションストア」。完成後の評判もすごくいいですよ。「売ろう」ではなく「楽しんでもらおう」という精神が現れていますから。花屋を入れたのもよかったよね。

佐藤 それは柳井さんのアイデアで、さすがだと思いました。花は生活に彩りを与えてくれるものですから、LifeWearの概念とも重なります。店を公園ととして誰もが遊べるようにしたのは、ユニクロはいまや国民的ブランドとも言えるインフラに近い存在だからこそ、地域や社会に向けてお店を開いていく必要があると考えたからです。

pen20210212satokashiwa-11.jpg

「ユニクロパーク」の正式店舗名は「ユニクロパーク横浜ベイサイド」。屋根面がそのままボルダリングウォールになっている。他にすべり台やジャングルジムもある"遊べるユニクロ"だ。こちらも佐藤がクリエイティブ・ディレクションを行っている。

pen20210212satokashiwa-12.jpg

店舗の設計は、建築家の藤本壮介。「店舗全体を公園にするというアイデアは、屋根面をすべて階段にした藤本さんの模型を見て、すべり台がひらめいたことから生まれました」と佐藤。

柳井 時代の流れとともに、商売をどういうふうに進化させていくかということは、常に話し合っていますね。ユニクロパークもそうだけど、今後は会社としてもっとソーシャルな存在にならないといけないと思う。

佐藤 そうですね。最近では、LifeWearの概念を世界に発信しながら、ユニクロは社会にとってどういう存在であるべきか、そのためには何をすべきか、ということを常に考えていますよね。

柳井 考えて話し合ったことの集大成としてデザインがある。単に表面的な形づくりじゃなくて、ビジネス全体をどう変えていくのかという設計図としてのデザイン。それができるクリエイターというのは、本当に希有なんですよ。

佐藤 柳井さんが僕の育ての親だと思っています(笑)

pen20210212satokashiwa-13.jpg

「今の日本の一番の問題は、困難なことや高い目標に対して、自分ならできると思える人が少ないこと。勇気と信念をもって、チャレンジする人が増えてほしいですね」と柳井。

柳井 改めて振り返ってみると、15年前の出会いというのは運命的だったね。普通なら不可能なプロジェクトが実現できたのも、僕らが互いに勇気を持って挑戦したからでしょう。

佐藤 そうですね。あの時は不思議と怖くなかったし、やれるはずというアドレナリンが出て突き進んでいけました。あとは、信念ですよね。柳井さんは信念をビジュアライズしたような人。最初から言葉に全くブレがなくて。お会いした当初から「世界一のブランドを目指す」とおっしゃっていました。実現するのは大変だなと思いましたが、ついにもう目前まで来ていますね。

柳井 本当にね。でも、確固たる目標としてもっておかないと、絶対に世界一にはなれないんです。以前ロンドンや上海に進出した時には、大失敗も経験しています。失敗したらほとんどの人は頭が真っ白になると思うんだけど、僕はなぜ失敗したのか、次はどうしたらいいかを必死に考えた。失敗する前に考えられればもっとよかったんだけど(笑)。志は決して曲げなかったからこそ突破できたし、社員たちもついてきてくれたんだと思います。

佐藤 チェーンストア戦略から旗艦店戦略にガラリと変えて大成功したのは、失敗の経験が活かされているんですね。柳井さんの、それこそ会社を懸けるくらいの気概が伝わってきましたから、僕も生半可な気持ちでは挑めないと思ったし、常に全力投球で今日まで進んでこられた気がします。

柳井 そうやって、お互いが成長し合える間柄を築けたのがよかったですね。世界一になれたら、また対談しましょう(笑)

※佐藤可士和の20年の仕事の歴史を1冊に収めた『ペンブックス 新1冊まるごと佐藤可士和。[2000-2020]』が発売。


ペンブックス 新1冊まるごと佐藤可士和。[2000-2020]』
 Pen編集部 編
 CCCメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

※2021.02.09

※当記事は「Pen Online」からの転載記事です。
Penonline_logo200.jpg



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-イスラエル、ガザ南部で軍事活動を一時停止 支

ワールド

中国は台湾「排除」を国家の大義と認識、頼総統が士官

ワールド

米候補者討論会でマイク消音活用、主催CNNが方針 

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「珍しい」とされる理由

  • 2

    FRBの利下げ開始は後ずれしない~円安局面は終焉へ~

  • 3

    顔も服も「若かりし頃のマドンナ」そのもの...マドンナの娘ローデス・レオン、驚きのボディコン姿

  • 4

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開する…

  • 5

    米モデル、娘との水着ツーショット写真が「性的すぎ…

  • 6

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…

  • 7

    なぜ日本語は漢字を捨てなかったのか?...『万葉集』…

  • 8

    メーガン妃「ご愛用ブランド」がイギリス王室で愛さ…

  • 9

    水上スキーに巨大サメが繰り返し「体当たり」の恐怖…

  • 10

    サメに脚をかまれた16歳少年の痛々しい傷跡...素手で…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 5

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 6

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 7

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 10

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中