最新記事

映画

2019年韓国映画界1000万超ヒットが5本も 撮影所から幽霊・水漏れまでヒットを呼ぶ要素

2019年12月22日(日)14時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

韓国映画誕生100周年という年にカンヌでパルムドールを受賞した『パラサイト 半地下の家族』はヒットを生む映画スタジオで撮影された。(c) 전주MBC News/ YouTube

<旧正月に公開された『エクストリームジョブ』の大ヒットにはじまり、5本も1000万人超えの大ヒットが生まれた韓国映画界。ヒット作を生むために映画人が気にしていることとは>

今年世界から注目されたアジア映画といえば、第72回カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールをはじめ、数々の映画祭で受賞を果たした韓国映画『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督)だろう。日本でも人気の高いポン・ジュノ監督作品ということもあり、来年1月10日の日本公開を待ちわびているファンも多いはずだ。

作品はもちろんだが、韓国国内ではこの映画が撮影された映画撮影所にも注目が集まっている。『パラサイト』の約6割が撮影されたのは、全羅北道の全州市にある「全州映画総合撮影所」というスタジオだ。最近、韓国の映画・放送業界では「全州の撮影所で撮影すると、その作品はヒットする」と話題になっている。

全州映画総合撮影所は、2008年にオープンした。しかし、当時映画撮影所といえば、この全州映画総合撮影所よりも、政府機関である韓国映画振興委員会(KOFIC)が1997年に京畿道の南揚州に開設した「南揚州総合撮影所」がすでに有名だった。南揚州はソウルからもクルマで1時間と比較的近い郊外にあるため、スタッフや出演者の移動も楽に行えるとして人気が高かったのだ。

ソウルからクルマで3時間もかかる立地の悪さ

これに対して後を追う形でオープンした全州映画総合撮影所は、ソウルからクルマで3時間以上もかかるというハンデをかかえていた。このため既存のスタジオと差別化を図るための戦略を立てた。まず、一番大きな特徴は韓国で唯一の室内・室外同時撮影可能な構造だ。室内J1スタジオ1044平方メートル、 J2スタジオ 792平方メートル、室外48,888平方メートルの敷地をもつ。スタジオのすぐ隣りに広大な野外撮影場があるため、同時進行で撮影スケジュールが組めるところが制作側からは重宝されている。

また、スタジオを建てて貸し出しだけ行うわけではなく、精力的な撮影誘致作戦も有名だ。撮影前にスタッフが行うロケハンの手伝いやインセンティブ支援、また、地元のマンパワーを生かした人的ネットワークによる支援も行ってきた。日本では、地方各地のフィルムコミッションがこのようなサービスを行っているが、単独の撮影所がここまで積極的にサポートするのは珍しい。

そうなってくると、だんだんと口コミが広がり、韓国中の撮影隊から注目されるようになる。これまで『霜花店 運命、その愛』を皮切りに、88作品の映画撮影が行われてきたが、いずれもヒット作が多く、『パラサイト』のように世界から注目を浴びる作品が次々と生まれている。その結果、まことしやかに囁かかれ始めたのが業界内のジンクス。「全州映画総合撮影所はヒット作を生む」という噂が広がっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権

ワールド

米空港で最大20%減便も、続く政府閉鎖に運輸長官が

ワールド

アングル:マムダニ氏、ニューヨーク市民の心をつかん

ワールド

北朝鮮が「さらなる攻撃的行動」警告、米韓安保協議受
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中