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定年後どう生きるか、最大のポイントは「黄金の15年」にあり

2017年10月23日(月)16時04分
印南敦史(作家、書評家)

そこで著者は会社に復帰した後も、自分の50歳からのヒントを求め、定年で退職した人たちに話を聞いて回ったのだそうだ。


 名刺には、○○コンサルタントや自治会の役員などいろいろな役職が書かれていたが、昔のバリバリやっていた姿から見ると背中がやけに淋しい人が多かった。
 ある先輩は声をひそめて「楠木君よ、実はこのまま年をとって死んでいくと思うとたまらない気持ちになることがあるんだ」とまで語ってくれた。会社員時代の役職や評価は、その人の定年後の状況とは関係ないことが分かった。(「プロローグ 人生は後半戦が勝負」より)

つまり、そうした経験を重ねていくうち、「会社の仕事だけでなく何かをやらなければならない」という気持ちが強くなっていき、それが本書へとつながっていったということ。その証拠に、本書では"能動的に動く"ことの価値が何度も強調されている。

定年後に能動的に動くというと、なんだかとても大変なことのようにも思える。ところが、決してそうではないことに著者は着目している。計算してみると、60歳からの人生における自由時間は8万時間もあるという。これは20歳から60歳まで40年間勤めた総実労働時間よりも多いそうなので、だとすれば確かに、定年後の持ち時間は決して少なくないことになる。

ましてや社内で高い役職を担って脚光を浴びていた人だとしても、それを引退や定年後まで引き延ばすことはできない。いうまでもなく、会社での役職と定年後の生活は必ずしも相関しないからだ。それは定年後、短期間のうちに衰えていく人の多さからも想像できることだろう。

逆に考えれば、もし若い頃に注目されることがなく、中高年になっても花開かなかったとしても、定年後が輝けば一気に状況は変わる。「終わりよければ全てよし」というわけであり、そういう意味では定年後、すなわち人生の後半戦こそが勝負なのだと著者は訴えるのである。

そのような考え方をベースとして、著者は本書で「社会とどうつながるか」「居場所を探す」にそれぞれ1章を費やしている。

ちなみに、社会とつながる3つのパターンとして紹介されているのは、まず「組織で働く」という選択。雇用継続で65歳まで元の会社で働くとか、ハローワークや人材紹介会社に紹介してもらう場合も考えられるだろう。

次は、以前の会社での業務と関連のある仕事に就くというケース。保険会社で営業を担当していた人が、キャリアを活かして保険代理店を始めるような場合だ。そしてもう1つは、蕎麦屋を開店したり、農家として独立するなど、今までの仕事とは全く違う生き方に取り組むケース。

どれを目指したとしても優劣はないが、多くの事例を見てきた立場として、著者は「趣味の範囲にとどめることなく、報酬がもらえること」「向き不向きを見極め、自らの個性で勝負できるものに取り組むこと」の重要性を強調している。

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