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ホラー映画

恐怖の「それ」がえぐり出す人生の真実

2016年1月15日(金)13時35分
クリス・ケイ

「それ」に感染した後のジェイの行動によって、ストーリーは少女もののサバイバル系ホラーを超えた領域へ展開する。

「セックスの悪を説く教訓的な作品と受け取る人もいるだろうが、僕の考えは違う」と、ミッチェルは言う。「ジェイは強い女性で、何も悪いことはしていない。好きな男の子とセックスしただけ。その後に起こったことは罪を犯したことへの罰ではなく、いわば現実との直面だ」

『イット・フォローズ』は、いつか必ず訪れる死と倫理をめぐる作品だ。誰かに「それ」をうつせば、自分は一時的に恐怖を逃れられる。その設定には、現実の性感染症が人間関係にもたらす問題の根源がある。誰かと寝れば病気でなくなるなら、あなたはどうするか......?

「セックスをする理由はさまざまだ」と、米家族計画連盟の教育部門副責任者レスリー・カンターは指摘する。「単純そうなのに、実はとても奥が深い。誰かと深く結び付きたいという願望からホルモンまで、あらゆることが理由になる」

 だからこそ、ドストエフスキーだ。「人間は永遠には生きられない」。劇中に彼の小説を登場させたことについて、ミッチェルはそう語る。

「セックスや愛は、死への恐怖にのみ込まれないための方法だ。セックスや愛を通じて、人生には限りがあるという現実に折り合いをつけられる。映画の登場人物はおそらくそれに気付き始めたところだし、すべての人がその事実の中で生きている」

IT FOLLOWS
『イット・フォローズ』
監督/デビッド・ロバート・ミッチェル
主演/マイカー・モンロー
キーガ・ギルクリスト
日本公開中

[2016年1月19日号掲載]

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