最新記事

映画

虚構を超えたヘビメタ・ドキュメンタリー

2009年10月22日(木)15時02分
ジェニー・ヤブロフ

情熱はどこまで本物?

「撮影中は何度も神に感謝した」と、ガバシは言う。「あんなネタはどう頑張っても考え付かない。あるときライブでリップスが悲鳴を上げ、腰を押さえてステージから駆け降りた。ロブのドラムソロの直前にシャウトした瞬間、イボ痔が飛び出したんだそうだ。彼らと一緒にいると、LSDでトリップし続けているみたいだ」

 当のリップスとロブはどう思っているのだろう。マンハッタンのバーで開かれた「ファンの集い」で聞いてみた。

 ロブは『スパイナル・タップ』と比較されることに食傷気味らしく、「俺たちはあの映画の前から活動してるんだ」と言う。リップスは「俺たちこそ本物のスパイナル・タップさ」と開き直るが、2人とも『アンヴィル!』で知名度が上がることを願っている。

 時を同じくして本家本元のスパイナル・タップ(マッキーン、ゲスト、シーラー)も、MTVの音楽番組『アンプラグド』のもじりで「アンウィグド(ヅラはなし)」と銘打ったツアーを開始。夏には新アルバムも出すが、音楽的な野心は抱いていない。彼らの目標はロックでファンをKOすることではなく、笑わせることだ。

『アンヴィル!』でリップスとロブがバンドへの飽くなき情熱を語る場面には胸が熱くなる。でも同時に、テレビのリアリティー番組を見ているような落ち着かない気分にもなる。「出演者」の言動はどこまでが演技なのか、最後の涙はどこまで本物なのか。

「風刺と現実の間の境界線は曖昧になった。既に消えてしまったのかもしれない」と、ライナーは言う。「今は芸術を模倣する現実を、さらに芸術が模倣する時代。次は誰かがアンヴィルのパロディーを作る番だ。何でもありの悪循環はもう止まらないよ」

[2009年5月20日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

経産省、ラピダスへの6315億円の追加支援決定 総

ワールド

宇宙船オリオン、4人乗せ地球に無事帰還 月の裏側を

ワールド

アングル:イラン戦争でインフレ再燃、トランプ政権に

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、中東停戦維持期待で安全資産
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 5
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 6
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 7
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 10
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中