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輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中印のジェネリック潰し

Donald Trump Threatens 250% Tariff on Pharmaceuticals

2025年8月8日(金)15時10分
ヒュー・キャメロン

トランプの医薬品関税は、コスト上昇や薬の供給不足を招く可能性があると専門家は懸念する。

ノースカロライナ大学のビジネス・オブ・ヘルスセンターは4月、高関税はとりわけ輸入比率が高いジェネリック医薬品に打撃を与えるとの報告を発表した。ジェネリック医薬品はブランド医薬品に比べて利益率が低く、輸入関税がメーカーの経営を直撃する可能性も高い。

健康経済学者のジェロミー・ボルライヒは本誌に対し、「250%の関税は薬価に大変な影響を与える」と述べた。安くて幅広い需要に応えるジェネリック医薬品の価格は上昇し、巡り巡って医療保険料が上がるだろう。一方、競争力の強いブランド医薬品ではコスト増が「消費者に転嫁される」。

もっとも、医療政策専門家の一部は、この措置がグローバルな医薬品供給網の再調整につながれば、アメリカの消費者にとって有利になる可能性もあると述べた。それは「価格引き下げ」というトランプの謳い文句とは別の、安全保障上の問題だ。

そもそも今回の関税案は、アメリカ商務省が医薬品輸入の国家安全保障への影響を調査する中で浮上した。調査は4月、ハワード・ラトニック商務長官の指示により1962年通商拡大法第232条に基づいて開始された。

232条は、特定製品の輸入がアメリカの「国家安全保障を脅かす」と判断された場合に、大統領が広範な権限で関税の引き上げや輸入数量制限などの是正措置を講じることを認める法律だ。

アメリカの製薬産業は付加価値の高い新薬開発などで強い影響力を誇るが、ジェネリック医薬品については大半をインド経由で中国から輸入する薬に依存している。両国の力関係を考えた場合、由々しき事態だ。

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