最新記事
エネルギー基本計画

原発含め最大限活用へ、「依存度低減」を削除...次期エネ基原案

2024年12月17日(火)14時22分
神奈川県中井町の太陽光発電施設

経済産業省は17日、「可能な限り原発依存度を低減する」という文言を削除した次期エネルギー基本計画原案を有識者会議に提示した。写真は神奈川県中井町の太陽光発電施設で2016年3月撮影(2024年 ロイター/Issei Kato)

経済産業省は17日、「可能な限り原発依存度を低減する」という文言を削除した次期エネルギー基本計画原案を有識者会議に提示した。AI(人工知能)の広がりなどで電力需要が増加する中、脱炭素電源の確保が産業競争力に直結することから、エネルギーの安定供給へ原発を含めて最大限活用する方針を打ち出す。

エネルギー基本計画は3年に1度改定しており、次期計画は今月内に取りまとめる。

デジタル化やクリーンエネルギー化の進展で電力需要の増加が見込まれる中、それに見合った脱炭素電源を確保できるかが国の産業競争力に直結すると指摘。エネルギーの安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現を目指す。「エネルギー安定供給と脱炭素を両立する観点から、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入するとともに、特定の電源や燃料源に過度に依存しないようバランスの取れた電源構成を目指していく」とした。


 

半導体の省エネ性能向上、光電融合などの最先端技術の開発・活用、データセンターの効率改善などのほか、住宅などの省エネ化の推進などに取り組む。こうした徹底した省エネ、製造業の燃料転換などを進めるとともに「再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用する」と唱えた。

原子力については、2040年までに既存の原発のうち300万キロワット以上が運転期間60年に到達し、供給力が大幅に失われることを踏まえ、次世代革新炉の開発・設置に取り組む。現在は廃炉を決めた原発と同じ敷地内に限定している建て替えを、同じ電力会社の他の原発の敷地内でも容認する。

次期エネ基では、2040年度の再生可能エネルギーを4―5割程度(23年度は22.9%)、原子力は2割程度(同8.5%)、火力は3―4割程度(同68.6%)とした。

「原発依存度を低減する」という文言は、東日本大震災後の2014年に策定した計画で盛り込まれ、その後、維持されてきた。ロシアによるウクライナ侵攻に伴う資源価格高騰を受け、岸田文雄政権時の「骨太の方針」で原発の「最大限活用」を打ち出していた。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、イランのフーシ派支援に警告 国防長官「結果引き

ビジネス

消費者態度指数、5カ月連続マイナス 基調判断「弱含

ワールド

中国、欧州議会議員への制裁解除を決定

ワールド

エルサルバドルへの誤送還問題、トランプ氏「協議して
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中